ジャ社事件 問われる訪販協の監視能力

  DS業界の関心も高い「ジャ パンライフ」事件。9月に詐欺 容疑で逮捕された元幹部14人が 10月8日、再逮捕された。前回 の容疑とは別の顧客からも多額 の金銭をだまし取っていたこと が理由。さらに同日、山口隆祥 元会長は詐欺罪で起訴。一連の 「レンタルオーナー商法」問題 は佳境に差し掛かる。
 一方、関心の高さの一因でも ある、ジャ社被害者から肩代わ り弁済の請求が相次ぐ日本訪問 販売協会の「訪問販売消費者救 済基金(以下救済基金)」をめ ぐっては、ほとんど進展が見ら れていない。10月後半の理事会 でこれまでの請求状況が報告さ れる予定だが、肝心の弁済がい つ、どれだけの被害者に行われ るかは見通しが立っていない。
 ジャ社は、消費者庁の立入検 査を受けて15年に退会するまで 優に20年以上、協会に加盟し続 けた。オーナー商法を始めたの は03年。そこから12年間、協会 の正会員として破たん必死の自 転車操業を繰り広げた。
 この間、協会の監視の目がオ ーナー商法に対してどれだけ届 いていたのか。協会の消費者相 談室に関連トラブルの情報は寄 せられていなかったのか。「救 済基金」による弁済とは別に、 会員に対する監督責任の面から の検証も行われるべきだろう。
 この責任が強く問われるの は、ジャ社事件が悪質で被害規 模が巨額だから、というだけで はない。類似の商法を繰り広げ て破たんした会員企業は、ジャ 社事件の前にも存在した。
 一例が、推計で約200億円 を集めながら、その大部分を消 え失せさせた「ナチュラルグル ープ本社」。06~10年、ヴィン テージ酵素と呼ぶ食品原料への 実質的な出資を1口630万円 で募り、年10~11%の金券配当 や酵素の買戻しを約束したが、 結局 破たんした。
 ナ社は協会の正会員だっただ けでなく、取締役が01年から10 年まで理事を務めた。後半の5 年は出資募集時期と重なる。理 事会社が典型的な販売預託商法 に手を染めていたわけだ。  さらに、ナ社の前にも類似の 商法を繰り広げていた「バイオ シーパルス」が在籍。02年に入 会後、02年に経済産業省から特 商法で業務停止命令を受けるま で正会員だった。
 バ社は、一台30万円の波動水 生成器を「預かり在庫システム」 という仕組みで販売。購入者の 在庫を会社が預かり、保管・管 理すると振れ回っていたが、実 際は、メーカーから仕入れてい た台数が販売台数を大幅に下回 っていた。磁気治療器の在庫や レンタルに貸し出した実績がほ とんどなかったジャ社と同じ手 口だ。
 このような問題企業が存在し た過去を踏まえれば、ジャ社事 件や「救済基金」に相次ぐ弁済 請求は完全に想定外の事態とま では言えない。協会の監視能力 が改めて問われる。