特商法改正、自ら阻む〝黒塗り〟開示

  消費者庁が権限行使対象の拡 大を目指す特商法の「合理的根 拠資料の要請権」をめぐり、要 請権によって行政処分までの期 間が大幅に短縮されたという同 庁の説明について、本紙がデー タの開示を求めたところ、〝黒 塗り〟文書が開示された(10月 15日号1面参照)。実際にどれ だけの期間を短縮できたのか、 この点をブラックボックス化し たまま法改正の必要性を訴えて も、国会で議員の理解を得るこ とは難しいはず。〝黒塗り〟開 示は、法改正を自ら阻む行為に 等しい。
 消費者庁の「特定商取引法及 び預託法の制度の在り方に関す る検討委員会」がまとめた報告 書は、過量販売等でも要請権を 行使できるようにすべきと提 言。これを補強する材料として、 取引対策課は、04年改正におけ る要請権の導入後、「法執行の 迅速化が可能となって」おり、 「直近数年間の行政処分を見て も、当該規定の活用により、当 該規定がなかった場合の法執行 に比べ大幅に行政処分までの期 間が短縮されている」と説明す る資料を提出した。
 しかし、説明の根拠となるデ ータを求めた本紙に開示された のは、04年度以降に国が処分し た事業者数のみ。処分した事業 者のうち何社に合理的根拠を求 めたかをはじめ、処分までの期 間を知る手掛かりとなる「着手 日」「合理的根拠請求日」「処 分日」の具体的な日付は伏せら れた。
 同庁が説明した不開示の理由 は「執行等に関する着眼点、ノ ウハウ、手法、時期等が明らか にな(る)」ことで、「法執行 事務の適正な遂行に支障を及ぼ すおそれ」があるというもの。 調査過程で「正確な事実の把握 を困難にするおそれ」や、「違 法・ 不当な行為を容易にし、そ の発見を困難にするおそれ」も あるとされた。
 しかし、処分までの期間をど れだけ短縮できたかが公になっ たとして、法執行に本当に支障 が出るものなのか。そもそも、 同庁は処分までに要する平均的 な期間も明かしたことがなく、 今回の黒塗り対象にも含まれな かった。求めたデータを開示し ない合理的な理由がナゾという 状態だ。
 また、検討委員会における議 論は、メインテーマとなった販 売預託商法と詐欺的な定期購入 商法の規制に集中し、要請権の 行使対象を拡大する案につい て、まとまった意見交換は行わ れていない。対象候補となった 過量販売で合理的根拠の考え方 の要件を示すように求める議論 は交わされたが、行使対象を拡 大することの是非とは別の話 だ。
 だからこそ、要請権が処分の 迅速化に貢献してきたという具 体的なデータが求められる。に もかかわらず、黒塗り開示では 納得を得られるものではないの ではないか。