連鎖販売規制 年齢制限論、丁寧な議論を

 日本弁護士連合会が消費者相 等に提出した意見書で、特定商 取引法の改正で22歳以下と連鎖 販売取引を行うことを禁じるこ とを求めた(11月12日号4面既 報)。意見書で指摘された通り、 若者層の「マルチ取引」相談件 数は増加傾向にあり、2年後に 成年年齢引き下げも予定されて いる。しかし、特定の行為に法 律で年齢制限をかけることはよ ほどの事情がある場合に限られ るはず。仮に俎上にあげるとし ても業界の取り組みも踏まえた 丁寧な議論が不可欠だ。  連鎖販売規制を求める日弁連 の意見書は12年と15年に続き3 回目。利益収受型物品・役務の 取引等を連鎖販売で禁じる要望 など、過去2回と重複するもの もあるが、年齢制限に踏み込ん だのは初めてとなる。
 過去10年ほどのPIO―NE Tデータを見れば、20歳以下の 「マルチ取引」相談件数は増加 傾向にある。近年は、所謂「モ ノなしマルチ」の割合が高まっ ていることも確かだ。  一方で業界は自主規制に取り 組んできた。暗黙の了解として、 大学生をはじめとする学生の登 録は認めていない。仮に、学生 登録を認めているというMLM があれば、業界関係者であって も驚くだろう。最大手の日本ア ムウェイのように、学生は愛用 会員登録でもNGというケース も珍しくない。
 また近年は、万が一にも大学 生が紛れ込まないように、登録 可能な年齢を23歳以上に引き上 げる会社が増えた。したがって、 意見書が求める〝22歳以下禁止 ルール〟が実現したとしても、 直ちに悪影響を受けるという会 社は そう多くないとも考えられ る。
 しかし、法律で年齢を区切る となると全く重みが違ってくる 以上、話はまた別。2020年 版の消費者白書で指摘されたよ うに、19年度の「マルチ取引」 相談件数は52%を「モノなしマ ルチ」関連が占め、業界の主流 と重なる商品系の相談件数を上 回った。「モノなしマルチ」の 典型は仮想通貨、海外投資など のファンド系、アフィリエイト、 格安の海外旅行・福利厚生、F X取引用ソフトなど。業界から も異端視されている商材だ。
 意見書でも提言されている が、こういったマネーゲームも どきの連鎖販売を禁じるだけで も、若者層における「マルチ取 引」相談の減少に相当の効果を あげるのではないか。
 若者特有の経験不足から安易 に登録してトラブルに発展しや すい、といった懸念も理解はで きる。が、業界も何も手を打っ ていないわけではない。公的身 分証のコピーの提出、電話によ る本人意思確認、親等の同意の 取得といった手段を多くの会社 が取り入れている。行政に目を 付けられやすい若者トラブルを 火種として抱えることは、業界 自身も望むところではない。ま ずは対話を求めたい。