日本にも有言実行の自主規制組織を

   米MLM業界で、DSAが発 足させた自主規制組織、DSS RC(ダイレクトセリング自主 規制協議会)が問題企業の是正 指導に乗り出している(11月19 日号1面詳報)。ターゲットは 根拠なく製品の治癒効果を謳っ たり、簡単に報酬を稼げるかの ように煽る手口。ここ数年のD SAは、会員が相次いで米FT C(連邦取引委員会)の〝制裁〟 を受け、廃業やビジネスモデル の見直しに追い込まれている。 そのFTCの協力も得たDSS RCの取り組みは、業界外から の見方を変え、これ以上の規制 を避ける意味で、日本において も参考になるのではないか。
 DSSRCの発足は昨年1 月。当初、目立った活動は見ら れなかったものの、寄せられた 苦情相談や問題事例を分析。今 年から活動を本格化した。背景 には、新型コロナの影響で会員 のリクルート活動がオンライン 上で増え、SNSや動画共有サ イトで問題事例が目につきやす くなった事情も指摘できる。
 8~10月に指導した「ルヴェ ル」「IML」「ビューティー ・カウンター」は、いずれもD SA非加盟ながら米業界人なら 誰もが知る有力企業。ル社は、 製品を飲んで〝糖尿病を脱し た〟、会員になれば〝億万長者 になれる〟といった会員の説明 に是正を求められ、その大部分 を削除。削除に応じなかった会 員は資格を一時停止した。  これら3社の指導は、TIN Aという詐欺的広告の監視団体 による通報をきっかけとした が、独自情報による指導にも着 手。4月には、是正に応じなか った「NewULife」をF TCと米FDA(食品医薬品局) に通 報している。
 DSSRCの財源はDSAに よって賄われている。その一方 で、業界に忖度せず自律的に活 動できているのは、問題行為を 監視し、苦情処理にあたる作業 を業界外の自主規制機関にゆだ ねていることが大きい。様々な 業界を対象に不正な営業・広告 活動を監視するBBB(商事改 善協会)がそれで、監督はBB Bのバイスプレジデントが担当 する。
 FTCという規制当局の圧力 も緩んでいない。4~5月、コ ロナ問題に便乗して治療効果を 宣伝したり、簡単に儲かるかの ような説明が確認されたMLM 16社に警告。この中にはDSA 加盟社が複数含まれた。再びF TCから提訴される会員を出せ ない以上、DSSRCの取り組 みも真剣さを帯びている。
 翻って日本国内には、MLM 各社を横断的にまとめ、かつ業 界全体を監視・指導するような 組織は存在しない。では、摘発 や行政処分を受ける企業が少な いのかというと、全くそうでは ない。個社の健全化への努力と 並行してDSSRCのような業 界一丸となった取り組みは有効 のはず。改めて考えてみてもよ いタイミングではないか。