連鎖の若年トラブル、徹底排除を

  業界中堅の「アリックス・ジ ャパン」に消費者庁から特定商 取引法違反で9カ月の取引等停 止命令が出された(12月3日号 3面既報)。業界でよく知られ た連鎖販売業者に対する同庁の 法執行は、3年前のフォーデイ ズ以来。同社は業界を代表する 企業で、ア社も売上と会員組織 に急速な拡大が見られていた。 ただ、今回はそのこと以上に、 相談当事者の多くを若年層で占 めていたことが特筆される。周 知の通り、PIO―NET集計 の「マルチ取引」相談は20歳代 以下で過半数を占められ、この 層におけるトラブルに対して消 費者行政は常に監視を怠ってい ない。若年トラブルの排除に後 れを取ることは命取りになると 改めて肝に銘じるべきだ。
 ア社を処分した消費者庁の調 べによれば、相談当時者の平均 年齢は26.1歳。年代は「20歳 代」が79.0%を占め、「30歳 代」の7.2%、「40歳代」の 2.6%、「50歳代」の2.0 %を大きく引き離していた。ア 社が規約で登録自体を認めてい ない「10歳代(未成年)」も1 .1%を占めていた。
 また、相談者の職業は「給与 生活者」が67.4%を占めた一 方、大学生等の「学生」も13. 4%と相当割合を占めた。20歳 代が8割を占めたことを踏まえ ると、大学生が勧誘、契約のト ラブルに見舞われていた可能性 が捨てきれない。
 ア社は規約で大学生を含む学 生 の登録を認めていなかった。 5年前から登録可能年齢を23歳 以上に引き上げてもいた。
 さらに、同じく5年前より、 25歳以下と一定タイトル以上の ビジネス会員を対象として、コ ンプライアンステストへの合格 とコンプライアンストレーニン グの修了を報酬支払い条件に追 加。その後、18年よりトレーニ ング修了の条件は全ビジネス会 員に広げていた。
 したがって、学生トラブルを 排除できる仕組みは整えていた と言える。しかし、同庁がまと めたデータから前述の可能性が 捨てきれないことは、ルールの 運用がいかに重要かということ を物語る。
 連鎖に限らず、若年トラブル を問題視する傾向と、これを規 制する動きは強まっている。直 近では、4月に施行された特商 法の改正施行規則(省令)が、 判断力不足に便乗した契約締結 行為が「若年者」を対象とした 場合も違法になると明文化し た。1年半後に迫った18歳への 成年年齢引き下げを前に、この 傾向がますます強まっていくこ とは疑いようがない。
 以前から連鎖の若年トラブル を追求してきた日本弁護士連合 会は10月、22歳以下と連鎖販売 取引を行うことを禁じる法改正 を求める意見書を出した。若者 層を多く抱える連鎖の処分は、 こういった要請に根拠を与える ことにもつながる。各社とも改 めて徹底排除に臨むべきだ。