柔軟施策でニーズ汲み取れ

 本紙が実施した「第69回ダイ レクトセリング(DS)実施企 業売上高ランキング調査では、 調査企業122社の小売ベース の売上高総額は14339億9 00万円となった。前期と比較 可能な114社の総売上は1兆 3975億2800万円で、前 期比で2.8%減となった。
 売上高総額が2%以上の減少 となったのは前回に続いて2回 連続で、その前は2015年12 月の第59回調査となる。ダイレ クトセリング業界はバブル崩壊 やリーマンショックなど社会情 勢の変化や消費者の価値観の多 様化の影響を受けてきたが、近 年は多くの企業において、業態 改革の成果がみられるようにな っていた。だが、2020年は インバウンド需要の一服感や、 新型コロナウイルスの感染拡大 に伴う社会経済活動の停滞が、 各社の業績にも大きな影響をも たらした。
 ダイレクトセリング化粧品分 野では、大手・老舗が堅調に業 績を伸ばしてきた。しかし、こ れまでサロンビジネスや海外展 開、大ヒットとなったシワ改善 美容液「リンクルショット」と いった商品政策など、多方面で 業界をけん引してきたポーラ が、インバウンド需要および国 内における新規獲得の低迷、コ ロナ禍による購買行動の鈍化に よって苦戦した。直近の第3四 半期(7月~9月)では、海外 でコロナ禍の影響が薄れ、特に 中国では売上高が同52%増と盛 り返した。2021年は、日本 国内では新規感染者数が急増し ており、先行き不透明感が増し ている。同社では、サロンにお けるオンラインカウンセリング の導入など、コロナ対応のビジ ネスモデル構築を急いでいる が、どの程度の効果があるのか、 動向が注目されている。
 D S化粧品分野では、これま でサロンや異業種とのコラボ、 商業施設での体験イベントなど 多様なアプローチで新規顧客の 獲得につなげる動きが活発だっ たが、ニューノーマルの生活様 式の浸透とともに、その手法に も変化がみられる。サロンでは 十全な感染防止対策を講じて営 業活動を行い、個室の増設やオ ンラインカウンセリング、ハン ドエステに比べると接触が少な いメニューなどを導入して、ウ ィズコロナに適応したスタイル へのシフトを進める。また、サ ロンと同等のサービスを提供す る訪問エステや、巣ごもり需要 を見据えたネット通販の強化と いった動きもみられ、これまで 培ってきたノウハウを上手く組 み合わせて対応している。オン ラインセミナーや動画配信によ る販売員・愛用者のフォローも 多くの企業が取り入れている。
 コロナ禍によって、消費者の 価値観は大きく変わった。今後、 社会がどう変化するか分からな いが、このビジネスには、どの ような時代でも、柔軟にニーズ を汲み取ってきた強みがあると 言えよう。