つながり求めるニーズ汲み取れ

  2021年も早1カ月余が過 ぎようとしているが、昨年から 続く新型コロナウイルスの感染 拡大によって、ダイレクトセリ ング業界も予断を許さない状況 にある。各国でワクチン接種が 始まり、日本でもその準備が進 められている。さまざまな課題 があるものの、ワクチンの接種 はコロナ禍収束のための大きな ステップであることは確かだ。 11都府県には2月7日まで緊急 事態宣言が再発出され、サロン などの営業が制限されるなど苦 境が続くが、ここが正念場と思 いたい。
 コロナ禍という社会を揺るが す出来事によって、消費者の価 値観やライフスタイルは大きく 変わった。消費行動においては、 人との接触を極力回避できるネ ット通販の勢いが強いが、一方 で、コミュニケーションを求め るニーズも高まってきている。 不安定な時代にあって、人との つながりを確認することで安心 を求めたい気持ちはいつの時代 も同じで、10年前の東日本大震 災の際にも、つながりを再確認 する機運が高まった。ダイレク トセリング業界では、こうした 消費者ニーズの変化を汲み取 り、顧客接点のあり方を柔軟に 変える動きがみられる。
 ドア・ツー・ドアをはじめと する従来型訪販は、高度経済成 長期以降は女性の社会進出や消 費行動の変化を背景に、新規顧 客へのアプローチとしてはハー ドルが高くなった。そのエッセ ンスを引き継いだホームパーテ ィや口コミビジネスが主流とな り、さらに2000年代に入る と地域に拠点を設けるサロンビ ジネスや、異業種とのコラボレ ーションイベント、商業施設で の体験ブースなど、訪販という スタイルにとらわれず次々と柔 軟な施策を打ち出してきた。そ の根 幹にあったのは、顧客との 直接の対面であり、カウンセリ ングであった。
 コロナ禍によって直接の対面 が困難になったが、この年間 で業界にも浸透したIT技術に よって、「直接会えない」とい う不利を補うことができた。ビ デオ会議ツールなどを用いて距 離を問わず顧客とコミュニケー ションが図れるようになったこ とで、遠方に引っ越した顧客な ど、従来の手法では関係性が希 薄になっていたかもしれない顧 客に対しても、十分なフォロー ができるようになった。セミナ ーやイベントの類も、100% のカバーは難しいが、ある程度 オンラインで実施可能であるこ とも分かってきた。
 コロナ禍の1年によって、ア ナログとデジタルの双方を活か したビジネスモデルの構築も進 んでいる。顧客へのアプローチ は時代とともに変容し、柔軟に そのあり方を受け入れてきたの がこのビジネスの強みと言え る。人とのつながりを欲するニ ーズを汲み取り、提案していく ことが、今の時代に最も求めら れていると言えよう。