強み活かした関係性強化こそ

  日本国内でもワクチンの接種 が始まり、新型コロナウイルス 感染拡大の収束に向けた期待感 が高まりを見せている。ダイレ クトセリング業界の化粧品分野 では、感染防止対策を講じたサ ロン営業やIT活用のカウンセ リングなど、新しいビジネスモ デルが整いつつある。一方、各 社の業績をみると、昨年はコロ ナ禍の影響が色濃く出たことが 分かる。コロナショックから脱 却し、多様化した消費者ニーズ を敏感に汲み取り、従来以上に 細やかに対応できる商品・サー ビスの提供が急務だ。
 業績面において、コロナ禍の 影響が顕著だったのは最大手の ポーラだ。ポーラ・オルビスホ ールディングスの2020年12 月期は、連結ベース売上高が前 期比19.8%減の1763億1 100万円となった。このうち、 ポーラブランドは売上高が同24.1%減の1028億8800 万円、営業利益が同57.2%減 の109億2700万円と厳し い結果となった。コロナ禍によ ってインバウンドおよびバイヤ ーの減少が続いたほか、緊急事 態宣言に伴う外出自粛などによ り、店舗の臨時休業および営業 時間の短縮を余儀なくされた。 海外では前半戦でコロナ禍の影 響を受けたが、後半は日本国内 より早い回復を見せた結果、中 国・韓国では売上が前期比60% 増と好調だった。
 日本国内の苦戦は、コロナ禍 によって「ポーラ・ザ・ビュー ティー」などの店舗や百貨店に おいて、新規顧客の獲得が伸び 悩んだことによる。チャネル別 の売上伸長率では、海外が31.1%増、ECが63.4%増だっ た一方で、委託販売チャネルが 26.8%減、百貨店・BtoBが 56.5%減と、人との接触が多 いチャネルと接触が少ないチャ ネル で明暗が分かれた。各社に よって差異はあれども、コロナ 禍において概ね同様の傾向がみ られる。
 ウィズコロナ、アフターコロ ナのビジネス展開では、ECを はじめとする非接触型の販売チ ャネル・サービスとの連動は必 須条件と言える。ポーラ・オル ビスHDは2021年~202 3年までの中期経営計画を策 定。この中で、ポーラブランド では、販売チャネルを横断した デジタルプラットフォームの構 築を急ぐとしており、特に好調 なECについては、売上を3年 間で約3倍(35億円↓約100 億円)を目指す。委託販売チャ ネルでは、利益率の高いロイヤ ル顧客の育成に注力するととも に、IT活用で顧客とのコミュ ニケーションの強化を図る方針 だ。中でも、販売員自らが情報 発信する地域密着型の取組みに よって、顧客との関係性を構築 する動きを見せる。
 社会情勢の変化によって顧客 との接点が多様化しても、訪販 で培ってきた人のつながりを生 かしたノウハウは強みになると 言えそうだ。