パラダイムシフトへの対応こそ

  依然として予断を許さない新 型コロナウイルスの感染拡大 は、社会のあり方を大きく変え た。働き方や休日の過ごし方と いったライフスタイルはもとよ り、未曾有の事態に価値観の変 化を感じたことも少なくない。 この1年、世界中でさまざまな 変革の兆しがみられたように思 える。日本国内においてもさま ざまな出来事があったが、最近 世間の関心を集めたのは、「女 性の活躍推進」であろう。
 本紙でも折に触れて報じてき たように、ダイレクトセリング 業界、特に化粧品分野は、他の 分野に比べて女性の力を活かす 施策が目立つ。もともと女性の クチコミ力や共感力によって事 業を拡大してきたビジネスであ り、時代とともにあり方を柔軟 に変容させながら、「人と人の つながりを活かしたビジネス」 という軸を保ってきた。近年は、 特に女性の力を営業現場だけで なく、ビジネスをマネジメント する主宰企業という立場でも、 積極的に女性を起用する動きが みられる。その最たるものは、 2020年1月のポーラにおけ る人事で、及川美紀氏の社長就 任はまさに時代の変化を象徴す る出来事であったと言えよう。
 ポーラは昨年6月にサステナ ビリティ方針を策定し、202 9年までのSDGsの目標数値 を設定。この中で、ジェンダー、 年齢、地域格差、さまざまな 「壁」の解消を掲げており、地 域企業オーナー、地方自治体の 協業などを強化するとともに、 女性管理職比率の男女同等、美 容職のダイバーシティ推進、育 休取 得率の男女100%取得を めざしている。
 女性が働きやすい環境整備の 動きは、他社でもみられる。ナ リス化粧品では20年以上前から 働きやすい環境の整備を進めて きた。育児休業からの復職や定 着、女性正社員比率および女性 管理職比率の増加などを目標に 推進した結果、現在、正社員の 女性比率は54.8%、女性管理 職比率は35.7%、さらに子育 てをしながら管理職を務める 「ママ管理職」は42.0%とな っている。加えて、研究開発部 門の女性比率は約6割で、うち 約半数は育児をしながら研究に 従事する「ママ研究職」だとい う。厚生労働省の調査によると、 日本における女性管理職の割合 は11.8%、うち製造業では7 .5%(2018年度)にとど まっており、同社は会社に先ん じて「女性活躍」を推進してき た。さらに、性別を問わず、す べての社員が育児や介護など、 年齢とともに変化するライフス テージに応じて働くことができ る制度を整えていることも注目 すべき点だ。
 コロナ禍を契機に、パラダイ ムシフトは急速に進んでいる。 人のつながりという古くから重 んじられてきた価値観を保ちつ つ、多様性に対応した環境を整 備する取り組みは、今後さらに 増えるとみられる。