書面交付の電子化 整合性欠く訪販協「意見書」

  特定商取引法改正案に盛り込 まれた「書面交付の電子化」に 対して、日本訪問販売協会は法 案成立を求める意見書を提出し た(4月1日号4面参照)。し かし、法案に盛り込まれたクー リング・オフの電磁的通知を可 能とする改正には、慎重な対応 を要請。電子化という同じテー マで差異のある主張は整合性が 取れているとは言えず、意見書 の説得力を削ぎかねない。  意見書は、電磁的交付を「直 ちに実現すべき極めて重要かつ 必要性の高い規制・制度改革」 と強調。「改正の方向性は時宜 を得た内容」と評価した。書面 が受領されたことの確認や紛失 ・不交付の防止、デジタルの特 性を活かした消費者保護機能の 充実などにも役立つとする。  これに対して、ク・オフの通 知を電磁的手法で行うことを認 める改正は、「より慎重な対応 を要する」と要請。通知が契約 者本人の意思によるものか、事 業者が確認する方法について 「十分な検討が必要」とも求め、 書面交付の電子化とは対照的な 姿勢を示す。  一方、業界の「ク・オフ通知 の電子化」への姿勢は、意見書 と異なる可能性がある。本紙が 17社から得た回答をもとにまと めた賛否は、賛同意見が10社と なり、反対意見は1社にとどま った(4月8日号1面参照)。 残り6社の回答は明確な賛否を 含まず、意見書に近い意見も見 られたが、結果として賛同が過 半数を占めた。
 また、電磁的通知とは異なる が、電話等の口頭でク・オフを 通知された場合、拒否したりせ ず手続きを取るように訪販協は 自主行動基準で定めている。こ の規定は02年に作られ、運用歴 は20年近い。電話等の口頭とメ ール等の電磁的通知のどちら も、 非書面という点は共通する。
 ク・オフ電子化については、 訪販協に先駆けて意見書を提出 した日本新聞協会も、紙の書面 による通知に比べて意思確認が 難しくなる可能性があり、「契 約の成否にかかわる」「懸念が 払しょくされるよう慎重な検討 が必要」としていた。
 ただし、同協会の場合は、書 面交付電子化にも「消費者・事 業者双方にとって混乱を招くよ うな制度設計は、かえってトラ ブルを生じかねません」「事業 者側の意見を十分に聞き、慎重 に検討するよう求めます」とけ ん制。どちらの電子化にも後ろ 向きだった。議論の不十分さな どを理由に消費者団体等から反 対が相次いでいることに「この 点は事業者にとっても同様」と 異例の賛意も示し、両方の電子 化に後ろ向きだった。
 法案が提出される前、電子化 をめぐる消費者委員会の業界ヒ アリングに訪販協がまっさきに 呼ばれたように、今回の意見書 は法案審議においても参考材料 にされるとみられる。アンバラ ンスな主張の混在が説得力に影 響を与えないか懸念される。