「美白」にみる時代の変化

  化粧品業界において、 「美白」 と「エイジングケア」は2大ト レンドとして長らくニーズを獲 得してきた。昨年来のコロナ禍 によって、ライフスタイルが変 化したことを受けて、化粧品の 売れ行きにも変化がみられる。 リップ関連の売上が低迷する一 方、衛生関連品や、〝おうち美 容〟で高級スキンケア品が支持 を集めている。春先は、紫外線 の強まりとともに、美白商戦が 過熱する時期だ。
 化粧品市場では開発競争の結 果、近年は新規成分や複合機能 で訴求する傾向が強まってい る。最大手ポーラの美白ブラン ド「ホワイトショット」は、2 019年に日本国内では10年ぶ りとなる新規美白有効成分「P CE│DP」を配合したライン ナップを展開し、苛烈な市場競 争において差別化を図ってき た。このほど、初の「美白ケア ×多機能UVケア」で訴求する 日中用クリームを発売し、別の 角度からもブランド力強化を進 めている。新商品は、ヒトの肌 が本来持つ日焼けから肌を守る 力に着目し、メラトニンの減少 による日焼けしやすさに関わる タンパク質を増やす成分を配合 することで、UV刺激を受けて も過剰なメラニン産生を抑える という。
 かつて、季節性のあるスペシ ャルケアだった美白化粧品だ が、環境や消費者の意識の変化 によって、現在は通年アイテム として定着している。そのため、 多種多様な価格帯、販売チャネ ルでの展開も盛んだ。ナリス化 粧品では、セルフ市場向けに展 開している「パラソーラ」ブラ ンドから、UVケアにトーンア ップ、美白機能をプラスした 「パラソーラ ホワイト ブラ イ トニング UV」を新たに発 売。機能性だけでなく使い心地 にもこだわったのが特徴で、コ ロナ禍で夏場でもマスクを着用 する機会が増えたことで、蒸れ やベタつきなど、肌荒れに悩む 女性が増えていることを踏ま え、肌に優しい塗り心地に仕上 がっているという。また、エフ エムジー&ミッションの「ミッ ション UV プリベンダー  EX」は、日焼け止めとエイジ ングケア、御木本製薬の新UV ケアシリーズは、UVケアにス キンケア効果、大気汚染など環 境ストレスにも着目しており、 各社でトレンドを踏まえた製品 開発が目立つ。
 一方で、化粧品業界では、人 種差別へ反対する観点から、 「美白」「ホワイトニング」と いう文字を使わない取り組みも みられ、日本にも波及している。 日本国内では「美白」が依然と して根強い人気を維持している のは確かだが、この動きを注視 する必要はあるだろう。コロナ 禍の1年間で、価値観の大きな 変化はさまざまな分野でみられ た。前述したように、化粧品市 場でも変化が生じている。既存 のトレンドに固執しない柔軟な 戦略が求められている。