訪販協の救済基金 肩代わり弁済、結論待ったなし

  約2090億円の被害を生 み、破産手続き中の「ジャパン ライフ」の管財人から債権者へ の配当率が1%未満となる見通 しが明らかにされた(4月日 号4面既報)。実質的な被害救 済にはほとんど結びつかないと 考えられるだけに、日本訪問販 売協会の「訪問販売消費者救済 基金」による肩代わり弁済の重 みがいよいよ増す。
 破産手続きは18年3月に開 始。資産の回収が進められてき たものの、昨年12月の第5回債 権者集会で配当見込みは未定と 報告されていた。公租公課や労 働債権の合計を回収額が上回る に至っていなかったためだ。
 しかし、ジャ社の19年度の税 務申告を管財人が行った際、約 10.5億円の消費税還付を申告。 当局と協議を進めていたとこ ろ、正式に還付が決まった模様 だ。回収額との合計は公租公課 と労働債権の合計を上回り、配 当の見通しが立った。
 ただ、配当率は1%未満とわ ずか。オーナー商法の被害者に は、一人で数百万~数千万円を 出資したケースが珍しくなく、 億円単位の出資者もいた。仮に、 1000万円が未返金だった場 合、配当で戻ってくる金額は数 万円程度ということになり、被 害回復という点ではほとんど意 味をなさない。
 そこで改めて注目を集めるの が「救済基金」だ。ジャ社が協 会の正会員だった15年10月まで に訪問販売で結ばれた契約な ら、100万円を上限とした肩 代わり弁済を積立金から受けら れる余地がある。
 被害者による「救済基金」の 利用申請は、18年頭に最初の申 し出が行われた後、協会が申請 の受付を締め切った昨年1月ま でに、件数ベースで数千件が寄 せら れた模様(1人で複数の申 請を行った場合を含む)。書類 の不備や申請条件への不適合、 民法の5年時効などを理由に受 理されていない申し出があった 一方で、相当数の申請が審査待 ちの状況にある。
 最初の申請から3年半近くが 経過する中、いまだに肩代わり 弁済の結論を協会が出していな い理由の一つに、協会事務局は、 破産手続きにおける配当の有無 や配当額が決まるのを待つ必要 がある旨を説明してきた。 「救済 基金」からの弁済額は、契約者が 支払った額が基準となるため、 配当が行われた場合、配当され た額を弁済予定額から除外する 必要があるというのが理由だ。
 しかし、配当率の見通しが示 され、7月の次回債権者集会で は具体的な金額が示される可能 性が高い。先送りしてきた「救 済基金」による弁済の有無も結 論を求められる。そもそも破産 手続きの結果を待つというルー ルは「救済基金」の実施方法書 に記載はなく、ジャ社の破産手 続き開始後に浮上した特例に過 ぎない。被害救済の観点から、 これ以上の先送りは許されるも のではないだろう。