もはやコント、電子化要件に「紙」の承諾

 もはやコントという他ない。 「書面交付の電子化」をめぐる 消費者庁の支離滅裂な国会答弁 の件だ。電子化を盛り込んだ特 定商取引法改正案の衆院審議 で、オンライン非完結型の分野 で電磁的交付を行う場合、前提 となる消費者の承諾は「当面、 紙で得ることが考えられる」と 次長が説明。参院審議でも同様 の説明を繰り返している。デジ タル化の条件に紙というアナロ グな手続きを求める本末転倒の アイデアが批判を呼んでいる。
 改正案は衆院をすでに通過。 修正決議によって施行時期が1 年延期されたが、電子化の規定 自体に変更はない。依然、消費 者団体等や野党を中心に反対論 は根強いものの、参院でも可決 される可能性が高い。
 一方、反対論をかわすため、 消費者庁は審議の中で、法案成 立後に政省令等で定める運用ル ールの現時点における考え方を 説明した。その一つが、電磁的 交付を行う際に消費者から得る 必要がある承諾の実質化。口頭 ・電話だけで得た承諾は承諾と 認めない、消費者から明示的返 答・返信がなければ承諾とみな さない、承諾を取る際は承諾に よる効果やメール等で送付され る内容を明示的に示す とい う〝3要件〟が示された。
 問題は、この〝3要件〟をク リアする具体的な手順に関して 浮上。承諾を得たとみなす手続 きについて、次長から「電子メ ールなどの電磁的方法か紙で承 諾を得た場合にのみ認められる ことが考えられる」「例えば、 オンラインで完結する分野は電 子メールで、それ以外のものは 当面、紙で承諾を得ることなど が考えられる」と説明された。 オンラインで完結しない分野が 訪問販売や連鎖販売取引を念頭 に置くことは明らかだ。
 次長は、5月26日に始まった 参院審議でも同様の説明を繰り 返している。実際に、PDFの 書面をメールで送ることへの同 意を紙で得るといった事態にな れば、まさに滑稽という他ない。
 周知の通り、電子化の案件は 内閣府の規制改革推進会議で突 如浮上した。公の場で一定の議 論を経たものではなく、消費者 委員会のヒアリングで日本訪問 販売協会が「青天の霹靂みたい」 と述べた通り、業界にとっても 唐突さが否めない。しかも消費 者団体を中心に160カ所を超 える団体から反対意見が出てい る。このような異例な状況の中、 何とか電子化を実現しようとし ている消費者庁が、その意義を 骨抜きにする要件案を次々に打 ち出す矛盾について、同庁自身 は自覚しているのか。
 消費者庁は電子化の目的を 「消費者利益の擁護増進のた め」と説明していたが、もはや 電子化の実現自体が目的となっ ている感さえある。成立さえす れば事業者にとって使い物にな らない内容でも知らぬ存ぜぬと いうことなら、一旦白紙に戻す ほうがまだマシではないのか。