電子化審議 「蚊帳の外」だった訪販協

  法定書面の電磁的交付を可能 とする特定商取引法改正案が6 月9日の参院本会議で可決、成 立した。電子化を求めていたダ イレクトセリング関係者は少な くないが、衆参の審議では、前 提となる消費者の承諾を紙で取 得させるといった本末転倒の要 件案が次々と浮上。施行は2年 後に先送りされ、見通しの不透 明さは一層増した感さえある。 その一方、電子化メリットの実 現に向けて働きかけを行うべき 日本訪問販売協会の影は薄く、 どこまでの巻き返しが図れるか 判然としない。
 本会議に先立って採決が行わ れた参院特別委員会では、13項 目に渡る附帯決議を全会一致で 決定。この中に、電磁的交付へ の承諾を消費者から得る際、契 約内容の重要点を「書面等によ り明示的に示す」ことを要件と する要求が入った。衆参の審議 で消費者庁は、オンライン非完 結型の分野は当面の間、紙で承 諾を取得させる考えを繰り返し 答弁。このままなら、政省令・ 通達等において、電子化の条件 に紙の発行を求めるという業界 にとって悪い冗談のようなルー ルが盛り込まれかねない。
 一方、電子化の意義が骨抜き にされかねない状況の中で、業 界の利益代表団体である訪販協 は存在感を発揮できていない。 それどころか、行政府と立法府 のいずれからもほとんど顧みら れていないのが実情だ。
 訪販協は、法案の上程後、書 面交付の電子化を「直ちに実現 すべき極めて重要かつ必要性の 高い規制・制度改革」とした意 見書を関係先へ提出。しかし、 衆参の審議において、この意見 書が具体的に言及されることは なく、さらに反対派の消費者団 体等によって、2月の消費者委 員会ヒアリングにおいて「(電 子化は)青天の霹靂みたいなも の」 と述べた専務理事の発言ば かりが取り上げられ、業界の電 子化ニーズに疑義を呈する材料 とされた。
 経団連が参考人として出席し た5月26日の参院特別委員会で は、反対派の野党議員から「経 団連が訪問販売業界までカバー して一生懸命に話をする必要は ないんじゃないか」「本来はや っぱり、日本訪問販売協会の方 に来ていただきたかった」と指 摘される一幕も。経団連が電子 化要求の具体例に出したのはオ ンライン英会話学習やホームセ キュリティの訪販で、どちらも 訪販協の正会員の間ではマイナ ーな分野。業界における電子化 の必要性を正面から訴える機会 を訪販協は得られておらず、蚊 帳の外の状態が続いている。
 法案の成立を受け、近いうち に、電磁的交付の要件等を議論 する有識者会議が発足する見通 し。ここに委員として参加する だろう訪販協には、万全の準備 のもと、業界と消費者のいずれ にとってもメリットのある電子 化の実現に向けた働きかけを行 ってもらいたい。