消費者委事務局長 「任命問題」、電子化議論の足かせに

  6月16日に改正特商法が公布 された。電子化規定の施行はク ・オフが1年以内、書面交付が 2年以内。それまでの間に、政 省令等に定める運用ルールの議 論が有識者会議で行われる。し かし、その立ち上げを妨げる、 ある問題の存在はあまり知られ ていない。消費者委員会事務局 長の「任命問題」の件だ。
 消費者委員会は、09年の消費 者庁発足時、同庁の「監視役」 を担うため設立された。同庁と 同格の第三者機関であり、その 事務局長には代々、経験豊富な 弁護士などが民間から就任して きた。同庁および同委員会の設 置を定めた法律の参院附帯決議 でも、「多様な専門分野にわた る民間からの登用を行う」こと が明記されている。
 が、昨年9月の新事務局長公 募の前月、唐突に「所属する各 省庁等の人事担当課を通じた応 募」も可能とするルール変更が 行われた。民間以外に公務員の 応募も可能としたわけだ。
 さらに、25年以上を要求して きた実務経験を20年以上に短 縮。この結果、当時、消費者庁 の消費者制度課長だった加納克 利氏が新事務局長に着任した。
 この件を、4月9日の参院特 別委員会で大門実紀史議員が暴 露。加納氏の実務歴が弁護士時 代と公務員時代を合わせて21年 2カ月だとして、「わざわざ加 納さんに合うように応募要件ま で変えた」と追及した。
 しかも、「任期終了後は原則 として出身省庁等に復帰する」 とのルール変更も行われてお り、至れり尽くせりの待遇。公 募には、民間から応募した人物 もいた模様で、まさに正直者が 馬鹿を見た状況と言える。
 一方、電子化の法改正をめぐ っては、消費者委員会で委員の ほとんどが反対の意見を述べて いたが、2月に出した「建議」 には 交付要件厳格化の要求が多 数盛り込まれたところ、電子化 自体への反対はなく、この“不 言及”が注目を集めていた。
 大門議員は、これを「消費者 庁に迎合するような建議」と表 現。政府の方針に沿うように加 納事務局長が「誘導したんでは ないか」「反対意見を説き伏せ てきたんではないか」と述べ、 事務局長は「かつてから消費者 委員会を敵視するような」人物 だったとして、「消費者庁の意 向に消費者委員会が(中略)逆 らわないように、従うように、 そういう目的であなたが入っ た」と追及した。
 電子化は有識者会議の議論を 経て出てきたものではなく、消 費者庁がリードした改正と言え る。そのため、同庁が会議を主 催・運営することは公平性が保 たれない。そのような事案はこ れまで、消費者委員会で議論の 場がもたれてきた。しかし、同 委員会が同庁出身者によってコ ントロールされているとすれ ば、会議を開催する手段が失わ れてしまう。「任命問題」の早 急な解決が求められている。