給付引当額、ジャ社問題反映した計上を

  ジャパンライフ事件の被害者 から推定数千件の利用申請が寄 せられている日本訪問販売協会 の「訪問販売消費者救済基金」。 が、初申請から3年半が経った 今も給付時期の目途は立ってい ない。被害救済に遅れを生じる のみならず、給付額の見通しも 曖昧なまま。金額によっては再 び、会員に拠出を求める可能性 がある以上、申請の状況を踏ま えた引当が不可欠だ。
 基金に積み立てられた給付用 の原資は、21年3月末時点で1 億1603万3049円。09年 の開始当初は約8520万円だ ったが、新規入会の正会員に60 万円の拠出を求め、現在の額ま で膨らんだ(ほかに銀行預金金 利が加算)。会計上は固定資産 として扱われている。
 一方、「救済基金」からは固 定負債も発生。計上名は「消費 者救済基金出えん金給付引当 金」。文字通り、基金から給付 が行われる場合に備えた負債 だ。こちらの金額は、21年3月 末時点で3660万円。同時点 の積立額の32%に相当する。年 末にジャ社が破たんした17年の 3月末時点の計上額は2130 万円だったため、4年で153 0万円を積み増した。
 ジャ社被害者による申請は、 18年初頭から寄せられ始め、20 年1月の受付締切まで続いた。 このため、1530万円の積み 増しは、被害者への給付を想定 したように受け取れる。
 しかし事務局はこれを否定。 引当金に計上する3660万円 という額には、ジャ社被害者か ら寄せられた推定数千件に及ぶ 申請の処理結果が反映されてい ない。
 が、積立金からどれほどの額 が給付に回る可能性があるかと いう見通しは、会員にとって大 き な関心事のはず。その額によ っては、再び拠出を求められる ルールとなっているためだ。
 基金の業務実施方法書は、積 立金の残額が基金設立時の金額 である8520万円の60%を下 回った場合、1社あたり60万円 を上限として「正会員に対し基 金への出えんの増額を募る」と 定めている。具体的な金額に直 せば、5112万円を下回った 場合が該当する。
 21年3月末時点の残額は約1 億1603万のため、差し引き すれば、給付額が約6491万 円以上となった場合、再拠出の 要請が行われることになる。同 方法書は、給付事案を生じた会 員に減った積立の穴埋め拠出を 求めるルールも定めているが、 破たんしたジャ社には期待でき ない。
 推定の申請数が数千件に及 び、被害者には一人で数百万~ 億円単位を支払っていたケース が珍しくない。申請1件あたり 100万円という給付上限があ るとはいえ、現状の積立に対し て相当な額の給付が必要となる 可能性が否定できない以上、引 当金は実態を反映した額が計上 されてしかるべきではないか。