苦境の中で生まれる新施策

 本紙既報の通り、「第70回ダ イレクトセリング(DS)実施 企業売上高ランキング調査」で は、調査企業124社の小売ベ ース売上高総額は1兆4005 億8000万円となった。この うち、前期と比較可能な121 社の総売上は1兆3862億8 00万円で前期比3.4%減、 前回調査時と比べてマイナス幅 が0.6ポイント増加した。コ ロナ禍になって1年半以上が経 過し、その影響が色濃く出た結 果となった。
 訪販系企業では、化粧品最大 手のポーラが前期実績で大幅に 売上を落としたが、直近業績で は、第1・第2四半期と盛り返 してきている。主力の委託販売 チャネルで新商品がヒットして いるほか、コロナ禍の中で好調 が目立つECチャネルが売上を 押し上げた。また、海外市場で は、中国本土における売上高が 前年同期比120%増、韓国免 税店でも堅調に推移しており、 コロナ禍からの回復が国内より 早かった効果がみられる。
 現在は、国内外でデルタ株の 感染が急拡大しており、再び先 行きが不透明になりつつある が、昨年と大きく異なるのは、 ワクチン接種が進んでいること に加え、ニューノーマルに対応 したビジネスモデルが着実に構 築されつつあり、消費者ニーズ にも柔軟に対応できるようにな っている点だ。ポーラだけでな く、他の化粧品系企業も各社の 強みを活かした新しい商品・サ ービスの提供を進めている。
 MLM企業では、日本アムウ ェイ、ニュースキンといった大 手が増収となった。アムウェイ は3期ぶりの増収で、コロナ禍 の中で健康食品需要が増加した ほか、耐久消費財が堅調だった。 同社は2020年6月からAm azon内の公式ストアで一般 向け 販売を行っている。ニュー スキンは、直近の2021年12 月期第1四半期(1~3月)に おいて、売上高が前年同期比10.9%増と、四半期ベースでは 4期連続の増収となった。ML M分野では、訪販分野と比べて デジタル対応が進んでいるのも 特徴だ。ナチュラリープラスは、 セミナーやトレーニングを独自 の動画プラットフォームによる 配信でオンライン施策の強化を 行っている。2020年10月に 開催した世界大会も初のオンラ インで開催し、日本語版、英語 版、中国語版の3チャンネルを 同時配信した。また、〝スポー ツニュートリション〟水素水 「OLEMIO」の新製品発表 会をオンラインで配信したほ か、説明用のパワーポイント資 料の提供、製品の公式インスタ グラムを展開するなど、オンラ インビジネスのさらなる強化を 進めている。
 DS市場全般では依然として 厳しい状況にあるが、その中で も業績を伸ばしている企業もあ る。目まぐるしく変化する情勢 やニーズへのいち早い対応が求 められる。