相次ぐ連鎖処分、改めて規律正せ

  連鎖販売の特定商取引法処分 が繰り返されている。昨年から 現在までに取引等停止命令を受 けたのは延べ12事業者。目立つ のは投資用USBメモリなど実 態に乏しい所謂〝モノなしマル チ〟だが、MLMの主流である 健康食品、化粧品の処分も。特 に後者は売上の大きな企業がタ ーゲットとなっている。処分の 根拠となった、お決まりのオー バートークをフィールドから排 除するための取り組みが、業界 各社に改めて求められている。
 消費者庁は8月26日、「IT ECINTERNATIONA L」に6カ月の取引等停止命令 を下した(訪販業務にも同期間 の停止命令)。自社の化粧品に ついて、有名ブランドと同じ工 場で同時期に製造されていたか のように説明したり、実際は関 係のない大学と共同研究で開発 したかのように述べていた。
 同庁による連鎖処分は20年以 降で8社目。昨年は、英会話教 材・レッスンの「dorogu ba」、健康食品・化粧品の 「アリックス・ジャパン」、福利厚 生サービスの「アイエムエスジ ャパン」の3社に3~9カ月の 取引等停止を命令。今年は2月 に、学生に借金でUSBメモリ を買わせていた「Sign」 「D EAN」を処分。6月にはオンラ インカジノの「NO―VA」、8 月3日には健康食品の「リーウ ェイジャパン」を処分した。
 都道府県の中でトップクラス の執行体制をもつ東京都も連鎖 処分に積極的。昨年、USBメ モ リを販売していた「itec japan」「ファースト」 「ライズ」「Axis」の計4 事業者を処分している。
 これら12社中11社に共通した 違反が勧誘目的等不明示。「い い話がある」などとだけ告げて アポイントを取る行為が特商法 で許されないことは、業界にと ってはイロハのイ。しかし、日 常風景化してしまっていること も事実だ。「絶対儲かる」「病 気が治る/に効く」といったオ ーバートークも多数の処分で認 定された。クーリング・オフが できないかのように告げた妨害 行為も目立つ。
 コンプライアンスセミナー等 を通じた定期教育を行っている 主宰企業が大半とはいえ、それ が右から左に受け流されていて は意味がない。フィールドに自 分事として捉えてもらうための 知恵を絞っていく必要がある。
 業界の主力である健康食品、 化粧品を扱っていた企業は、一 定以上の売上だったことも注目 すべき点。アリックスは処分ま での2期で80億円近く、リーウ ェイは136億円を売り上げて いた。直近のITECは1期で 約106億円。行政サイドにと っては売上額=被害額であり、 この数字が大きければ、さらな る被害の未然防止効果も込みで 評価が高まる仕組み。売上に比 例して相談件数を増やしている 企業は放置が命取りになりえる ことを自覚すべきだろう。