アクアライン処分 お客様相談室の本分、再確認を

 水回り修理系の訪販を行って いた「アクアライン」に、消費 者庁から特商法違反で9カ月の 業務停止命令等が出た。無料の 見積もりや数千円程度の修理を 依頼した消費者に数十万円の改 修工事を勧誘。クーリング・オ フの申し出を妨げたり、補修品 の製造が終わったかのように告 げてトイレ一式の交換を持ちか けたりと、上場企業とは思えな い手口が明らかになった。
 このような手口は、ここ数年、 同庁や国民生活センターが幾度 も注意喚起してきた。同庁は処 分の直前に、特商法の適用除外 規定に関する「Q&A」を公表。 この中で、表示金額と実際の請 求額に相当な開きがある場合、 来訪を求めた消費者は「高額な 請求額で契約を締結する意思は 有していなかったことは明ら か」として、除外対象とならな い旨を強調していた。来訪要請 のボーダーラインを狙った手口 には、今後も厳正な法執行が行 われていくとみられる。
 一方、このような手口以外に も、今回の処分には見過ごせな い点があった。ア社の代表だけ でなく、お客様相談室室長にも 業務禁止命令が出た件だ。
 室長は、苦情相談対応の責任 者を務める一方、従業員へ勧誘 の手法等を指導、指示する立場 にもあり、社内研修等の講師を 務める指南役だったという。
 さらに、被害事例の一つに相 談室が関与していた疑いも。工 事を契約した消費者が、翌日に 消センへ相談。ク・オフを申し 出たところ、営業マンとは別の 従業員が、仲介あっせんに入っ た消センに〝すでに役務を提供 しており原状回復できない〟な どと主張し、値引きを持ち掛け、 最 終的にク・オフを諦めさせて いた。同庁の説明よれば、値引 きを持ち掛けたのは相談室の従 業員だった可能性が高い。
 実践的なコンプライアンス講 習を目的に、相談室が販売教育 を受け持つのは珍しくない。が、 勧誘手法の指南役まで兼ねるケ ースは、まず聞いたことがない。
 そもそも、相談室は営業から 切り離した独立運営が定石。日 本訪問販売協会も、「消費者志 向チェックリスト」のチェック 項目に「苦情処理担当部署は企 業トップの直属の部署として、 かつ営業部門から独立の位置づ け及び人員を配置している」こ とを盛り込み、営業部署等の影 響を受けないよう明確に求めて いる。ア社は協会の会員ではな かったが、それ以前の話だ。
 ア社は9月7日公表の声明で 「(相談室が)いつしかクレーム 対応部門と同義化」 「事案によっ ては誠実性が欠けていた」と反 省の弁を述べた。お客様相談室 の本分を外れ、逆に営業的立場 に浸食されたことが、9カ月と いう停止期間を呼び込んだ一因 となった。大半の企業は、ある べき本分を承知しているはずだ が、これを機会に、本来の役目 を果たせているか改めて確認す ることも選択肢の一つだろう。