成年年齢引き下げ 18~19歳の勧誘、業界は熟慮を

  来年4月1日の「成年年齢引 き下げ」まで残り半年となった。 ダイレクトセリングは大半の事 業者が成年を対象とした勧誘、 契約締結を行っていると考えら れるところ、新たに成年となる 18~19歳を対象に含めるのか、 判断を迫られる形となる。
 訪問販売を中心に高齢者トラ ブルがクローズアップされがち な業界。背景には判断力不足に 乗じられやすい事情がある。  一方、若者の場合も判断力不 足を理由としたトラブルが少な くない。高齢者は多くが加齢に ともなう判断力不足なのに対し て、若者は社会経験の浅さに起 因する。この傾向は、年齢が若 くなるほど言えるはず。その点、 新たに成人となる18~19歳は他 の年代の若者より被害に見舞わ れやすい懸念がある。
 内閣府が18年に実施した、16 ~19歳の3500人を対象とし た全国規模の世論調査によれ ば、回答者の8割はクーリング ・オフ制度を知っていた一方、 全国共通の消費相談ホットライ ン「188」を知っていたのは わずか8%に過ぎなかった。
 また、成年年齢に達した場合 に親権者の同意なく契約できる ことを知っていた57.2%に、 未成年者に認められている契約 取消権を知っているかどうかを 聞いた結果、知っていたのは56.2%にとどまった。いわゆる 未成年者取消権の認知度は、全 体の3割程度に過ぎなかったこ とになる。この調査から3年を 経過しているとはいえ、これら の認知度がその後、大きく高ま ったとも考えにくい。
 一方、業界では、連鎖販売取 引と若者トラブルの多さが切っ ても切り離せない問題として指 摘されてきた。
 国民生活センターがまとめ た、 「PIO―NET」ベース の2020年度の「マルチ取引」 相談は、件数そのものは前年度 比約13%減と〝改善〟したもの の、相談全体に占める若者の構 成比は上昇。約46%を20歳代で 占め、20歳未満の未成年を含め た構成比は約49%とほぼ半数に 達した。
 全ての取引形態を含む総相談 件数に占める20歳代以下の構成 比は約12%。比較すると、若者 トラブルの多さが浮き彫りとな る。少なくとも、若者トラブル の顕著さが指摘されている場合 は、新たに成人となる18~19歳 については、熟慮を要すべきで はないか。
 成年年齢引き下げが近づくに ともない、消費者団体からは、 18年の民法改正時に附帯決議で 求められていた、知識・経験・ 判断力不足を利用した契約の取 消権の創設に至っていないこと などを理由に、引き下げ後も特 例的に、18~19歳の未成年者取 消権行使を認めるように求める 意見なども出ている。若者トラ ブルの増加を危惧する機運がさ らに高まっていくことも想定す ると、まずは慎重な姿勢が求め られるのではないか。