仮想通貨商法、業界からシャットアウトを

  ダイレクトセリング業界、特 にMLMで一時期蔓延った仮想 通貨商法を摘発する動きが、再 び活発となっている。フィール ドでは2~3年前にピークを迎 え、その後は下火に。この間に 家宅捜索等で証拠固めを終えた 当局が、相次いで容疑者の逮捕 に踏み切り、同商法の問題が時 間差で表面化している格好だ。 その危うさについては、多くの 業界関係者の間で認知が進んだ とはいえ、現場が再び浸食され ないように警戒を緩めないこと が肝心だ。
 10月18日、大阪府警は資金決 済法の無登録営業容疑で都内投 資会社代表ら6人を逮捕した。 「アークキャッシュ」 「バイオメ ックス」と称する仮想通貨の上 場話を持ち掛け、約16億円相当 の別の仮想通貨と交換させたと いう。「上場後は価値が何倍に もなる」という典型的な手口だ。
 同じ無登録営業の容疑で、警 視庁は9月、 「ワールドフレンド シップコイン」を取り扱ってい た都内運営会社代表を逮捕。同 月末までに起訴された。別の投 資詐欺事件の被害者を狙って同 コインを購入させていたが、今 も現金化できないままという。
 7月に愛知県警が詐欺容疑で 逮捕した「OZプロジェクト」 関係の4人も、仮想通貨取引に 出資すれば「4カ月で2.5倍 になる」などのウソの説明で60 億円以上を集めていたという。 17年頃から支払いが滞るように なり、19年に県警が家宅捜索を 行っていた。
 ほかにもここ数年で、「エム フェイス」「sener」とい った類似商法が摘発を受けてき た 。刑事事件になっていないケ ースだと、クローバーコインの 「48ホールディングス」が特商 法処分を受け、「ビットマスタ ー」が100億円以上の負債を 抱えて破たん。USBメモリの レンタルオーナー商法を繰り広 げた「WILL」は、後継会社 が「ヴィカシーコイン」と呼称 する仮想通貨話で資金集めを続 けようとした。
 一方、摘発や処分が進んだこ ともあって、仮想通貨商法関連 のトラブルは減少。国民生活セ ンターがまとめたPIO―NE Tベースの関連相談は、18年度 に3453件あった件数が20年 度には半分まで減少。21年度も、 8月時点の前年同期比はマイナ スとなっている。
 業界でも現場を荒らされるこ とへの警戒が進展。仮想通貨等 の投資話を周囲に持ち掛けた会 員は即、資格停止処分するとい った、規約強化に踏み切ったケ ースを聞く。
 仮想通貨商法を仕掛けるよう なアウトサイダーが、業界にと っても論外な存在であることは 言うまでもない。ただ、甘い蜜 を吸おうとそこに参画したネッ トワーカーが多数いたことから も目を背けられない。そのよう な手口に自社の会員が手を染め ないよう、今後も油断すべきで ない。