次の時代のスタンダードは

  2020年から始まったコロ ナ禍は、2年が経過しようとし ている。国をあげてのDX推進 を背景に、ダイレクトセリング 業界でも、デジタル・オンライ ン施策の導入が急速に進んだ。 コロナ禍が収束した世の中で は、ある程度はコロナ禍前に戻 るとみられるが、一度変化した あり方は戻ることはない。コロ ナ禍でビジネスのあり方が大き く変わったダイレクトセリング 業界だが、時代の流れに柔軟に 対応し、新しい商品・サービス が、次の時代のスタンダードに なるのではないか。
 1面で報じているように、化 粧品分野では、コロナ禍前から サロン展開が従来型訪販に代わ る販売チャネルとして定着して いた。コロナ禍によって、「3 密の回避」が求められたことで、 サロンのメリットである「1ヵ 所に集ってコミュニケーション を図る」ことへの懸念が広がっ た。感染防止対策を徹底すると ともに、デジタル・オンライン 施策を積極的に導入することで 厳しい状況を乗り越え、その結 果、新しいサロンのあり方も見 えてきた。コロナ禍で大きく変 わった消費者のライフスタイル や価値観に合わせて柔軟に需要 を掘り起こす姿勢は、バブル崩 壊や阪神淡路大震災、リーマン ショック、東日本大震災と、幾 度となく困難に襲われても底堅 い事業を展開してきたダイレク トセリング各社の理念を象徴し ている。
 コロナ禍の中で生まれた、サ ロンにおけるオンラインカウン セリングや各種イベントは、諸 事情で外出ができない人や、遠 方のため縁が途切れがちな人と もつながることができるため、 新しい接点という側面が多分に ある。リアルの対面販売で培っ てきたノウハウが、デジタル技 術に よって有効活用されている わけだ。導入当初は、デジタルツ ールに慣れない層がその利用に 手間取ったりしたようだが、現 在では多くの企業・サロンでス ムーズに活用されている。一方、 施術やより詳細なカウンセリン グなどは、やはりリアルでの対 面の方が満足度が高く、デジタ ル一辺倒ではなく、リアル・デ ジタルの併用がビジネスモデル として定着するとみられる。
 リアルにせよデジタルにせ よ、接点のあり方が変わっただ けで、人とのコミュニケーショ ン、対話がこのビジネスの肝で あることには変わりない。どの ような時代になっても、「人と 人のつながり」は、大きな強み であろう。東日本大震災時も、 〝絆〟を合言葉にグループ間で 相互扶助の動きがみられ、「震 災に負けない」とばかりに奮起 した販売組織が至るところでみ られた。コロナ禍でデジタル技 術の活用が進んだが、それによ り、リアルで「集う」ことの重 要性が見直された面もある。付 加価値をどのようなアプローチ で訴求するか、今後の課題であ ろう。