書面交付の電子化 代弁者不在、形勢不利の連鎖

 改正特定商取引法の「書面交 付電子化」をめぐり、消費者庁 で12月21日までに5回のワーキ ングチーム(WT)が開かれ、 計15団体がヒアリングを受け た。紙面で報じた通り、意見者 の多数は消費者サイドから選ば れており、同庁が国会で答弁し た要件案も踏まえ、紙による承 諾の取得や重要事項の説明義 務、メールで送信した電子書面 の受け取り確認などの厳格なル ールを要求。ダイレクトセリン グ業界の守勢が否めない中、と りわけ連鎖販売取引に関して は、訪問販売以上の形勢不利が 案じられる状況となっている。
 形勢不利の理由には、これま でのヒアリングにおいて、連鎖 販売事業者の立ち位置を代弁す る意見がそもそも出ていないこ とを指摘できる。
 2回目のWTに出席した日本 訪問販売協会は、訪問販売で想 定される電磁的交付のモデルケ ースを図解も交えながら詳細に 説明。申込および契約書面につ いてメールフォーム方式の電磁 的交付を例示したが、連鎖販売 のポジションや概要書面の電子 化には一切触れなかった。
 協会は正会員ベースで4割が 連鎖販売を行っており、特定継 続的役務提供を手掛けるところ も2割に達する(20年度時点)。 さらに、理事の4分の1の所属 会社は連鎖販売が主事業。連鎖 販売や概要書面の電子化につい て意見する役目を期待されてい るはずだが、今のところその動 きは窺えない。
 WTに出席した協会以外の事 業者団体も連鎖販売の電子化に はノータッチ。4回目で意見を 述べた新経済連盟は、オンライ ン完結型の特定継続的役務提供 について電子化のメリットを損 なわない柔軟なルール作りを求 め る一方、訪問販売や連鎖販売 については「オフラインの勧誘 が前提になってくると思う」 「そことは根本的に違う」とし て距離を置く姿勢をみせた。
 一方、消費者サイドの団体か らは、連鎖販売に対して訪問販 売以上の厳格なルールを求める 意見が相次いでいる。そもそも 電磁的交付を認めるべきでない といった考え方や、オンライン 完結型の取引で例外的に電磁的 な承諾の取得を認める場合も、 利益誘引型取引である連鎖販売 や業務提携誘引販売は除外すべ きといったアイデアだ。WTの ヒアリング状況の中間報告を受 けた消費者委員会においても、 11月12日の本会議で委員から 〝書面がないとク・オフが非常 にやりにくい〟〝しっかり規制 してほしい〟旨が求められた。
 来年2月に再開される6回目 以降のWTで事業者団体の出席 は未定。このままであれば、連 鎖販売を代弁する意見は出ずに ヒアリングが終了することにな る。その場合、連鎖販売事業者 が期待するような書面電子化は 実現されない可能性も否定でき ない。どのようなアクションを 取り得るかが問われている。