インボイスと価格交渉 指針か枷か、公取委「Q&A」

 来年10月にスタートする「イ ンボイス制度」をめぐり、取引 する免税事業者へ取引価格の引 き下げを要請した際の法的取扱 いに関して、公正取引委員会か らQ&Aが公表された(2月10 日号1面参照)。独占禁止法に おける優越的地位の濫用や下請 法の買いたたきとみなす考え方 を示したもの。ダイレクトセリ ング業界においてもある程度参 考になると考えられるものの、 あくまで大枠を示したに過ぎな い点も確か。役に立つ指針とし て機能するか、あるいは免税事 業者から仕入れを行う課税事業 者を縛る枷となるか、ケースバ イケースとなってくると言わざ るを得ない。
 Q&Aは、取引価格の引き下 げを目的とした交渉が形式的な ものに過ぎず、引き下げようと する事業者の都合のみで「著し く低い価格」を設定したり、 「免税事業者が負担していた消 費税額も払えないような価格」 を設定し、免税事業者が受け入 れざるを得ない場合、優越的地 位の濫用にあたると説明。取引 が下請法の規制を受ける場合は 買いたたきに該当するとする。
 DS業界では、制度スタート 後も消費税の仕入税額控除を受 けられるようにするため、免税 事業者にあたる契約販売員やデ ィストリビューターへ適格請求 書発行事業者(課税事業者)へ の登録を求めることを検討して いる会社が少なくない。ただ、 利益の目減りや面倒な納税手続 きを嫌う販売員等の反発を受け ることは必至。支払う報酬(課 税仕入れ)自体を見直すケース も出てくると考えられるため、 今回のQ&Aが参考になり得て くる。
 しかし、独禁法等に抵触する 「著しく低い価格」等の具体的 な目安についてQ&Aはノータ ッチ。公取委で優越的地位の濫 用規 制に関する相談を受け付け ている部署は、今後、目安にあ たる考え方を示す予定はなく、 業界特有の取引条件や慣習を踏 まえて個別に抵触の有無が判断 される旨を述べる。
 Q&Aは、独禁法等に触れな い取引価格の設定の仕方につい ても説明しており、「免税事業 者の仕入れや諸経費の支払いに 係る消費税の負担をも考慮した 上で、双方納得の上で取引価格 を設定すれば」問題ないとして いる。が、ハードな交渉が想定 される現場では、「双方納得」 と言われても理想論に過ぎない だろう。
 DS業界では、個人事業主に あたる販売員やディストリビュ ーターに支払う報酬について、 これを見直す際に独禁法や下請 法への抵触可能性を意識するこ とは、他の業界に比べて高くは なかったとみられる。が、イン ボイス制度がもたらす影響への 懸念が徐々に広がる中、関心の 度合いを強めている関係者も少 なくない。現場の実情とニーズ に即した内容のQ&Aが改めて 求められるのではないか。