電磁的ク・オフ、受付体制の整備急げ

  6月1日の施行まで3カ月を 切った改正特定商取引法。ダイ レクトセリング業界にとって最 大の改正点はクーリング・オフ の電子化だろう。ハガキなどの 紙の書面に加えて、メールなど の「電磁的記録」で申し出を受 けた場合も、無条件解約に応じ る必要がある。業界では改正以 前から、電話などの書面以外の ク・オフにも自主的に応じる会 社が多勢を占めてきたが、施行 後は不履行に罰則がともなう。 ク・オフ受付体制の再確認が求 められる。
 消費者庁は2月9日、改正法 の解釈通達と電磁的ク・オフの Q&Aを公表。この中で「電磁 的記録」による申し出の例とし て、メールのほかにWEBサイ トの申し出フォーム、FAX、 SNSを取り上げた。Q&Aで は「電子的方式、磁気的方式の ほか、人の知覚によっては認識 することができない方式で作ら れる記録であって、電子計算機 による情報処理の用に供される もの全てが該当」すると説明。 例示した以外のツールやアプリ も対象となり得てくる。
 一方、通達とQ&Aは、「電 磁的記録」による申し出の方法 を事業者が不合理に限定する行 為は、「消費者に不利な特約」 にあたり「無効」と強調。
 例えば、訪問勧誘のアポイン トをメールで取得しているのに メールによるク・オフを受けつ けない、あるいは、契約締結過 程で消費者から事業者への連絡 にSNSを使っていたのにSN Sでク・オフを受け付けない― ―といった行為が考えられると した。
 特商法において、契約の申し 込みの撤回や解除を妨げるため に相手を「威迫」「困惑」させ る行為は、3年以下の懲役等の 直罰規定の対象。電磁的ク・オ フを受け付けない行為が悪質と 判断 されれば、当局が動くリス クを生じてくる。
 現代において、事業を遂行す る上でメールを使わず、WEB サイトも開設していないという 会社は、まずないはず。したが って、メールあるいはWEBフ ォームによるク・オフの申し出 を円滑に処理する体制の確認 と、これらアドレスの法定書面 への記載などは喫緊の課題と言 えるだろう。コロナ禍を機にS NS等のオンラインアプリが販 売現場で常用されている場合な どは、SNS経由の受付体制の 整備も検討していく必要がある と考えられる。
 また、通達では、所謂〝言っ た言わない〟の問題を未然に防 ぐ観点から、電磁的ク・オフの 申し出を受けた事業者は、その 旨を消費者に「メール等で連絡 をすることが望ましい」と付記。 受理した旨の通知は改正法の義 務事項ではなく、あくまでアド バイスの範疇にとどまるが、技 術的ハードルが高いとも考えら れない。受理確認のメールは事 業者と消費者の双方にベターな 選択ではないか。