リアルとデジタルの接続

 ダイレクトセリング化粧品市 場では、主力のサロンビジネス のテコ入れを図ると同時に、E Cなど消費者需要の高い非接触 型チャネルの開拓にも注力して きた。その結果、ECが新規顧 客の獲得につながる動きが増え てきたが、いかにつなぎとめる かが現在の課題となっている。 言わば、デジタルとリアルの接 続だ。
 最大手のポーラは、2021 年12月期において、海外や国内 ECといったチャネルが売上を 伸ばした。一方、「ポーラ・ザ ・ビューティー」など主力の委 託販売チャネルは店舗数の減少 やコロナ禍における緊急事態宣 言等の影響を受けた。チャネル 別の売上構成比についても、委 託販売チャネルは7割弱と大勢 を占めるものの、占有率は低下。 国内ECは売上構成比は5%と 大きくないものの上昇。売上伸 長率では前期比で約%増とな っている。消費者の生活様式が 変わり、コロナ禍をきっかけに、 消費者ニーズは大きく変化し た。コロナ禍が収束すれば、あ る程度の反動はあるだろうが、 社会のあり方そのものが戻るこ とはないとみられる。ポーラで は、こうした社会の変化を踏ま え、ダイレクトセリングを生か した柔軟な販売チャネルの設 計、利便性向上を図っている。 特に、ECやオンラインツール でポーラに接触した顧客を、リ アルチャネルに接続する取り組 みを強化している。
 ツールとしては、公式スマー トフォンアプリ「PORTAL  by POLA」を開発した。 アプリでは、地域や季節、肌悩 みなどに応じた美容情報、多様 な視点から身の回りのさまざま な物事の本質を探るライフスタ イル 、アートやカルチャーなど 計100以上のコンテンツを配 信。店舗の検索、お気に入り店 舗で実施をしているキャンペー ンやイベントなどの情報発信・ 申し込みなど、店舗体験への利 便性を高め、デジタルからリア ルへの導線確保を図っている。 また、委託販売におけるオンラ イン決済・直送を導入したほか、 ビューティーディレクター(B D)のオンライン活動が収入に 反映される仕組みを整備してい る。さらに、昨年から行ってい る「法人設立」モデルを推進し、 販売員のプロフェッショナル化 をさらに進め、事業の持続可能 性も強化している。同社では、 BDを「美容のプロ」として位 置づけ専門性を高めているが、 働き方そのものが多様化してい る中、BDの育成、離職をいか に防ぐかが、事業基盤の確保の カギを握っていると言える。
 コロナ禍の中で、さまざまな デジタル施策が誕生し、ポーラ をはじめとするDS化粧品各社 でも導入されてきた。一方、リ アル施策の重要性も改めて認識 された2年間でもあった。時代 に合わせて、このビジネスの強 みである「つながり」を柔軟に 提供することが必要だ。