値上げの波、DS業界も苦慮

  マーケットのあらゆる分野で 値上げラッシュが起きている。 コロナ禍を背景とした世界レベ ルの原材料不足と、それにとも なう運送・人権費を含む高騰が 要因。そこにロシアの軍事侵攻 の影響が拍車をかける可能性も 大きく高まってきた。値上げの 波はダイレクトセリング業界も 襲い、多数の会社が値上げに踏 み切る。影響を抑えるため四苦 八苦する状況が垣間見える。
 ダストコントロール最大手の ダスキンは7月の値上げを決 定。モップ、マットなど主要68 品目の価格を3~6%引き上げ る。原料調達の見直しや生産・ 物流の効率化に取り組んできた が「自助努力だけでコストアッ プを吸収することが難しい」と 判断した。
 MLMでは、大手のモデーア ジャパンが4月2日から42品目 を約5%値上げする。対象には ロングセラーの健康ドリンクや 売れ筋のプロテインなどが含ま れる。エッセンシャルオイルの ヤングリビングジャパンインク も、オイルの大半を対象に含む 値上げを4月2日に予定。値上 げ幅は150円~350円にな るという。
 いずれのケースも主力アイテ ムにおいてユーザー視点で無視 できない幅、額の値上げとなる が、今後、同様の値上げが少な くない他社の間でも起きると考 えられる。値上げが難しい場合 は廃番といった選択もありえる だろう。
 振り返れば、業界では過去に も値上げの波が広がったことが ある。過去20年で言えば、07~ 08年における原油価格高騰等の 際に価格改定が相次いだ。12年 末の政権交代後は、金融緩和・ 脱デフレ政策を背景に円安を推 進した結果、やはり原料・燃料 価格を上昇させ、値上げの波を 生んだ。14年と19年の消費増税 もユ ーザー視点では値上げに違 いない。
 一方、昨年後半から徐々に高 まってきた値上げの波は、その 規模や先行きの不透明さから、 過去とは次元が異なるように窺 える。例えば、値上げ以前に売 るモノ自体がないという状況を 頻繁に耳にしたこと。本紙が昨 年12月に実施した業界アンケー トでは、51社の回答を集計した 結果、欠品・在庫不足やそれに ともなう販売制限・停止の頻度 が20年と比べて21年に「増えた」 とした会社が28%を占めた。頻 度が「ほぼ変わらない」とした 33%を合わせると6割が在庫状 況に課題を抱えていた。近年の 値上げの際は、ほぼ聞かなかっ た状況だ。
 そのため、値上げ前には通常、 買い溜めを目的とした注文の殺 到が予想されるところ、こうい った特需にどう対応するかとい う課題も困難さを増している。 価格改定に合わせた販売促進策 や特典の強化は計画・検討され ているが、それにも限界がある。 政府は減税等の即効性ある対策 を判断すべきではないか。