訪販協の「救済基金」、一刻も早く給付を

 前号1面で伝えた通り、「ジ ャパンライフ(破産手続き中)」 事件の被害者から膨大な数の利 用申請を受けている日本訪問販 売協会の「訪問販売消費者救済 基金」が、受理した申請の審査 を3月末よりスタートさせる。 17年末のジャ社破たんからすで に4年以上が経過。高齢者の多 い被害者に対する給付の可否の 判断は、一刻の猶予も許されな い状況と言える。しかし協会は、 ジャ社の破産配当が確定しなけ れば給付を行わず、配当が行わ れた場合は配当金を給付額から 差し引いて支払う方針を変えて いない。「救済基金」の趣旨か ら適切と言えるのか。
 受理案件の審査を担当するの は「消費者救済に係る審査委員 会」。学識者や弁護士資格保有 者、消費者団体トップなど5名 を委員とし、給付の可否や金額 などを判断する。
 協会事務局は夏までに結論を 得たい考え。審査委員会で給付 が妥当と判断された案件は、早 ければ10月の理事会で正式に給 付が決まる可能性がある。
 一方、給付が決まったとして も、実際に被害者の手元に救済 金が届くまでには、さらに時間 を要する可能性が高い。協会は 以前から、ジャ社の破産手続き が終わって配当が確定しない限 り、給付を行わない方針を取っ ているからだ。この方針に現在 も変わりはないという。
 ジャ社の破産財団は、2月に 開いた7回目の債権者集会で、 確認を終えた資産の換価・回収 はほぼ終えたものの、配当まで には「まだ一定程度の時間を要 する見込み」と報告しており、 10月の理事会の前までに配当が 確定する可能性は低い。その場 合、給付が決まっても配当確定 ま で保留されるというタイムラ グを生じてしまう。
 協会が配当の確定を待つ方針 を崩さないのは、配当金が出た 場合、その額を給付から差し引 く方針を取ることも理由。しか し、「救済基金」の業務方法書 や事務細則は、事業者が破産等 の法的整理に入った場合の給付 のあり方について何ら触れてお らず、あくまで協会内部の方針 に過ぎない。
 明文化されていないやり方 は、被害者による申請を代行し た被害対策弁護団から強い反発 を受けている。現状で見込まれ ている配当率が1%前後とわず かなことも、一刻も早い「救済 基金」からの給付を求める声を 高めている。
 協会はWEBサイトで、「救 済基金」によって「一人でも多 くの消費者に安心して訪問販売 をご利用いただくことができる よう、また、協会の会員事業者 が更に信頼され、愛される事業 者となるよう協会として、より 一層の努力をしてまいります」 と記載している。事実上、給付 を遅らせる条件を設けること が、協会の信頼性にどのような 影響を生じるか。理解できない はずはないのではないか。