特商法執行、コロナ禍で指導シフト

  長引くコロナ禍が特定商取引 法の執行に影を落としている。 前号1面でまとめた通り、21年 度の延べ処分数は前年度比43% 減という過去に例を見ないマイ ナス幅を記録した。特に都道府 県では、埼玉県や大阪府といっ た法執行に熱心だった自治体が 〝処分ゼロ〟となり、やはり異 例の状況を生じている。
 延べ処分数の減少は2年連 続。業務禁止命令の新設をはじ めとする処分ルールの強化が行 われた17年12月の改正法施行を 境に、18~19年度は大きく件数 を伸ばしたところ、20年度に始 まったコロナ禍が響いた。延べ 処分数の大幅な減少は、年度直 前に東日本大震災が起きた11年 度にも見られたことがある。し かし21年度は、11年度のマイナ ス幅である34%を10ポイント近 くも上回った。
 延べ処分数自体も、悪質リフ ォーム問題をきっかけとして全 国的に処分が行われようになっ た05年度以降で見た場合、新設 された業務禁止命令を除く業務 停止命令、指示の合計件数が過 去最低を記録した。
 都道府県に目を向けると21年 度に処分を行ったのは10カ所 で、前年度から2カ所減少。7 カ所にとどまった03年度以来の 少なさとなった。中でも、埼玉 県は02年度以来19年ぶりに処分 を行わず、大阪府も17年度以来 4年ぶりに処分がなかった。法 執行に熱心だった府県の未実施 が目を引く。
 埼玉県は〝処分ゼロ〟だった 要因の一つにコロナ禍を説明。 感染防止対策を取らざるを得な いため手続きに時間がかかるよ うになっているほか、違法行為 を裏付けるため相談者へ調査を 行う際、特に高齢者の場合は対 面の聞き取りが難しくなってい るという。21年度において執行 部門の配置職員数や予算に変更 はな かったとしているため、や はりコロナ禍の影響が大きかっ たと見られる。
 ただし、処分には至っていな いものの、特商法への抵触が疑 われる問題事業者への行政指導 はそこまでペースを落としてい ない。県によれば21年度は約60 件の指導を実施。20年度の85件 (消費生活条例に基づく指導を 含む)からは減らしたものの、 19年度の65件に近い件数を行っ た。
 処分数を減らした東京都も、 20年度の段階で前年度比34%増 となる119件の指導を実施。 コロナ禍で処分のための調査が 難しさを増す中、指導へのシフ トが図られている。埼玉県の担 当者は「処分にはそれなりの時 間がかかる」「早い段階で指導 して被害を少しでも食い止める という考え方もある」と話す。
 指導はある意味で処分への伏 線。業務の改善や相談件数の減 少が確認されなければ、コロナ 禍という事情があっても見逃さ れるとは考えにくい。引き続き 業界が法令遵守に努めるべきこ とに変わりはない。