書面の電子化 本格論戦前に〝鍔迫り合い〟

 来年6月までに施行される改 正特定商取引法の「法定書面の 電子化」規定について、運用ル ールの策定を目指している消費 者庁の「特定商取引法等の契約 書面等の電子化に関する検討 会」。本格的な議論が始まるの は5月末の第3回会合からとな るが、4月21日の第2回会合で は、事業者側委員と消費者側委 員の間で前哨戦ともいうべき 〝鍔迫り合い〟が生じた。
 鍔迫り合いが生じた論点の一 つは、電子化要件の一部の遵守 を事業者の自主規制にゆだねる アイデア。昨年8月~今年3月 のヒアリングにおける意見・提 案をまとめた論点案が、「業界 や企業の自主規制とすることが 適切な性質のものかについても 検討されるべきとの御指摘があ った」と盛り込んだことに対し て、増田悦子委員が「訪問販売 協会や通信販売協会に加盟して いる事業者以外のところで色々 なトラブルが起こることが多い と思う」と述べ、実効性に疑問 符を投げかけた。ヒアリングを 行ったワーキングチーム(WT) で主査を務めた鹿野菜穂子委員 も「特商法の対象となっている 事業者について言うと、気楽に 自主規制に任せていいとは中々 いかないのではないか」「最低 限きちんとした政省令による対 応は設けなければいけない」と けん制する意見を述べた。
 自主規制の具体案は、昨年9 月の2回目のWTで日本訪問販 売協会事務局長の小田井正樹委 員が、高齢者に対する電磁的交 付を禁止したり、親族等にも交 付するルールについて「自主規 制のほうが馴染む」と意見。高 齢者の親族等にも交付する考え 方は、昨年の改正案審議で消費 者庁から示され、参院の附帯決 議でも「家族や第三者の関与も 検討する」ように要請されたこ と。 消費者側委員も賛同の立場 を取る一方、やる場合は特商法 の政省令等で縛りをかけたい意 向をもつことから、本格論戦を 前に釘を刺した形だ。
 別の場面では、日本経済団体 連合会本部長の正木義久委員 が、政府のデジタル社会推進政 策や電子化規定をもつ他の法令 との整合性を事務局に確認した ことに対して、増田委員が「特 商法は特別に消費者保護が必要 な取引についての業法」「他の 法律と合わせるということがあ ってはならない」と対抗。昨年 9月に施行されたデジタル社会 形成関係法整備法において、書 面の意義が認められる場合は電 子化の対象にしないことにされ たとけん制し、事務局も検討会 の命題は「書面交付で果たされ ている消費者保護機能が実現さ れる形で、いかにデジタル化が 図れるか」と引き継いだ。
 簡便なルールを望む事業者側 委員と厳格な要件を課したい消 費者側委員の間において現時点 で歩み寄りは窺えず、議論の先 行きは不透明。どちらに転ぶか 業界は注視を怠るべきでないだ ろう。