特商法の次期改正 不招請勧誘議論、再浮上の懸念

 6月1日、改正特定商取引法 が施行された。ダイレクトセリ ング業界にとっては、ハガキ等 の書面が原則だったクーリング ・オフがメール等の電磁的方法 によっても可能となることが最 大の変更点。書面電子化規定の 施行が1年後に控えるものの、 21年改正はひとまずの区切りと 言える。
 一方、次の改正に向けた動き がすでに始まっていることも見 過ごせない。具体的には不招請 勧誘規制強化を目指す消費者側 団体の運動だ。昨年後半より、 複数の主要団体が勉強会、国会 議員や地方議会への根回し、署 名・アンケートの起案などに着 手を始めている。
 特商法の改正は、施行後5年 を経過した時点で、改正された 規定の施行状況を検討し、必要 があればその結果に基づいて 「必要な措置を講ずる」との規 定が盛り込まれることが通例。 昨年6月に成立した改正法のみ ならず、16年の前回改正でも盛 り込まれた。
 そして、前回の改正法が施行 された17年12月から今年12月で 5年が経過する。施行状況の検 討時期を迎えるわけだ。
 複数の有力な消費者側団体 は、この12月を一つの山場に位 置付け、特商法の新たな改正運 動に乗り出している。ここで注 目すべきなのが、この運動の主 要テーマに通信販売規制や連鎖 販売取引規制とともに掲げられ ているのが、訪問販売と電話勧 誘販売における不招請勧誘規制 強化の検討という点だ。
 業界関係者の多くが記憶して いる通り、16年改正に結び付い た答申を行った消費者委員会の 「特定商取引法専門調査会」は、 17回にも達した会合において、 不招請勧誘規制強化の是非をめ ぐって推進派と反対派の間で激 論が 交わされた。
 この中で、当初予定されてい た「中間とりまとめ」は「中間 整理」に格下げされ、新聞業界 の委員の発言をめぐる〝失笑事 件〟や、不招請勧誘規制の旗振 り役だった消費者庁審議官と取 引対策課長の事実上の更迭とい った異例の事態も発生。「中間 整理」の意見募集には4万件も の意見が寄せられ、その98%が 規制に反対もしくは慎重な議論 を求める内容だった。
 最終的に、答申における規制 強化の提言は見送られたもの の、消費者側団体はこれを反省 材料に、国の有識者会議等を舞 台とする〝短期決戦〟では不十 分と判断。助走期間を長く取っ た早い段階からの運動に乗り出 している。不招請勧誘という固 めのネーミングでは世論に訴え づらいとの考えから、〝お呼び じゃない勧誘〟という新フレー ズも考案。しかし、不要あるい は邪魔といったニュアンスを受 け取れる呼称は、少なくとも業 界関係者は抵抗感を抱くはず。 そのような呼称とともに不招請 勧誘議論が再浮上する可能性に は懸念を持たざるを得ない。