争点化する「消費者通知=起算日」案

 政省令における電磁的交付ル ールのあり方をめぐり、5月30 日の第3回検討会で本格的に議 論が始まった改正特定商取引法 の「書面電子化」。委員の間で 意見交換が行われた議題は、事 業者側と消費者側の意見が比較 的近かった「禁止行為」「第三 者関与」の2つ。このため大き な論戦には発展しなかったが、 今後の議題には、承諾取得等の 重要テーマが並ぶ。中でもクー リング・オフの起算日の扱いは、 事業者側と消費者側の対立を深 める争点となりつつある。
 改正特商法の条文は、電磁的 方法で法定書面が到達したとみ なすタイミングを「電子計算機 に備えられたファイルへの記録 がされた時」と定めた。素直に 読めば、PDF等の電子書面が 電子メール等によって消費者の パソコンに到達した時などが該 当すると考えられる。同時に、 ク・オフの起算日も「~ファイ ルへの記録がされた時」に始ま ると考えられる。
 一方、検討会で複数の消費者 側委員は、これとは異なるルー ルを要請。メールに添付された PDFを消費者が閲覧・保存し、 その旨を事業者にメール等で通 知した時などに、起算日が始ま るよう政省令で定めることを求 めている。検討会では、「ファ イルへの記録がされた時とは、 電磁的方法で書面を交付した 後、消費者がファイルを受け取 って保存できたかの確認と一体 と考える」(NACS・福長恵 子委員)、「消費者のサーバー に届いても確認保存しなければ 真に書面交付したとは言えな い」(全相協・増田悦子委員) との意見がみられた。
 弁護士の池本誠司委員と主婦 連の河村真紀子委員は、消費者 からの通知を起算日とみなすこ とが 難しい場合、「~ファイル への記録がされた」ことを事業 者に確認させる義務を定め、こ の手続きを取らなければ起算日 の始まりを主張できないように することを求めた。
 しかし、事業者側にすれば受 け入れられる話ではない。電子 化のメリットどころか、紙の交 付よりリスクを高めかねない。 反対する立場から、訪販協の小 田井正樹委員は「そういった解 釈にはならないのでは」「(消 費者による通知を)事業者から お願いはできても強制はできな い」と述べ、意見書で「(消費 者から)返信が無いことで、書 面不交付やク・オフ期間が起算 されないと解釈することには無 理がある」と指摘した。
 長年、訪販協の理事を務める 弁護士の高芝利仁委員も、「電 子書面を提供した時点以降の事 業者の対応や状況で(提供の有 効性が)途中から無効化する要 件設定の仕方は避けるべき」 「承諾取得の段階で、書面を受 け取った時点がク・オフの起算 点となること等を明示すること が重要」と意見した。次回以降 の検討会で、どこまで踏み込ん だ議論に発展するか要注意だ。