過量の具体要件、初公表の意図は

  4面で伝えた通り、訪問販売 等で住宅リフォームを勧誘・契 約する際、特定商取引法上の 「過量販売」に該当する要件を 消費者庁が策定した。過量条項 は導入から14年が経過。規制と してはすでに古株だが、具体的 な要件が示されたのは初とな る。過量の境界を示すと、ギリ ギリを狙った脱法行為を助長す るなどとして要件を避けてきた 国が、なぜ今、公表に踏み切っ たのか。
 これまで、特商法の過量該当 性の参考となる公的な基準、指 針は存在しなかった。過量規制 が始まった09年12月の改正法施 行に合わせて、日本訪問販売協 会が「通常、過量には当たらな いと考えられる分量の目安」を 作成はしたが、あくまで〝安全 ライン〟に過ぎず、ボーダーラ インではなかった。
 このため、ダイレクトセリン グを中心とした業界は、行政処 分の過量適用例や裁判所の判 例、自治体等のADRの判断を 参考に、過量の境目を探ってき た。処分等で過量が認定されて きた商材は学習教材、健康食品、 浄水器、布団、宝飾品、呉服、 健康器具、ダイビング講習など。 長らく過量の適用事例がなかっ た住宅リフォームについても、 19~20年に消費者庁が「さくら メンテナンス工房」と「メノガ イア」の処分で認定した。今回、 同庁から公表された具体要件 も、該当性を検討していく上で、 この2社の処分の内容が踏まえ られた。
 ただ、2社の処分自体が、住 宅リフォームの訪販等における 過量販売の具体要件を同庁に策 定させるきっかけとなった分け で はない。6月1日に施行され た改正特商法は、これに先立っ て2月に改正通達が公表されて いるが、ここで過量規制に関す る考え方の追記などは行われて おらず、近日中に示すスケジュ ールも予定されていなかった。
 特商法を所管する取引対策課 の説明によれば、直接の端緒は、 6月13日に国会で成立した改正 建築物省エネ法。新築住宅等に 省エネ基準適合が義務付けら れ、これにともなう工事需要の 高まりと共に悪質リフォームの 増加が懸念されるとした。
 1年間に3つ以上の工事とい う過量ラインの策定にあたって は、業界団体のヒアリングで得 られた実際の工事周期などを参 考にした旨を説明。業界サイド と折り合いの付く内容と判断し たことも、初の具体的な要件に 踏み切った背景に窺える。
 また、消費者庁はもともと、 昨年の特商法改正で、合理的根 拠要請権を過量販売でも行使可 能とする見直しを検討していた が見送っている。事業者側への 転換を狙った過量の立証責任だ が、引き続き行政側が負う形と なった。他の商材に比べて認定 が難しいという住宅リフォーム の過量販売で具体要件を示すこ とで、適用のハードルを引き下 げたい思惑も窺えそうだ。