書面の電子化 受領確認、ルール化の行方は

 6月30日に開かれた「特定商 取引法等の契約書面等の電子化 に関する検討会」の第4回会合 で、電磁的交付時のクーリング ・オフに関し、消費者が閲覧・ 保存した旨を事業者に通知した 時などに起算日が始まるとする アイデアを見送ることが委員の 間で確認された。電子化を認め ている他の業法と異なり、ク・ オフと交付が不可分な特商法で は、起算日の考え方は最重要ポ イントの一つ。DS業界にとっ ては、懸念材料の一部が払しょ くされたと言えるだろう。
 過去の会合で、消費者の通知 と起算日を連動させるアイデア を提示されていた事務局は、第 4回会合で「起算点たる電磁的 方法により提供された記録の到 達時点の考え方については、他 の法律も同じ規定振りであるこ とから、特商法等においても解 釈は同じとせざるを得ない」と 説明。消費者側委員からは「理 屈としては分かる」「理解はし た」との意見が述べられた。
 一方、電子書面の受領を消費 者から事業者に通知させる手続 きは、なんらかの形でルール化 される可能性を残している。
 理由の一例が、電子書面が文 字化けしていた場合。文字化け の箇所が法定記載事項と重な り、判読が困難なら書面不備を 認定されるリスクが出てくる。 不備書面の交付はイコール書面 不交付となるため、不交付を根 拠とした無期限のク・オフが可 能となってしまう。
 このようなリスクを排除する ためとして、事務局は「消費者 からの確認行為を通して、書面 を交付したという事業者の地位 を安定させる」仕組みの必要性 を強調。一部の消費者側委員か らも、無用なトラブルに発展す ることを未然に防ぐ観点から 「両者の利益のためビジネスプ ラクティスとしてこうしましょ うと いうことであれば大いに賛 成」といった意見が出た。
 ただ、ルール化するとなった 場合、その方法が改めて争点に 浮上してくることを気に留めて おく必要がある。国が定める方 法としては政省令や通達、ガイ ドライン、Q&Aなどが考えら れるが、どれを選ぶかで重みが 全く異なってくる。業界団体等 の自主規制にゆだねる方法も考 えられ、論争の種になり得てく るだろう。
 消費者からの確認行為の具体 的な手順にまで踏み込むのか、 あるいは各社のやり方に任せる のかという論点も浮上してく る。業界では、本人意思の確認 等を目的にサンキューコールや 公的身分証のコピーの提出とい った手続きが浸透しているが、 ここに電子書面の受領確認手続 きを組み込めるのか、別の手続 きが求められるのか。事業者に とっての課題となり得てくる。
 電子化論争の本丸である承諾 取得のあり方を含め、デジタル 化の利便性を損なわない仕組み の構築のためには、ここからが 正念場と言えるだろう。