サロンは新たなステップへ

  コロナ禍の中、3年目の夏を 迎えたダイレクトセリング化粧 品市場では、リアル・デジタル 各施策を展開し、新規顧客にア プローチする動きが強まってい る。一方で、各社の業績推移を みると、増収、横ばい、減収い ずれも前年同期とほぼ変わって おらず、コロナ禍におけるビジ ネス環境が依然として厳しいこ とが分かる。
 ダイレクトセリング化粧品企 業では、サロンビジネスが対面 型のカウンセリング販売として 20年以上にわたって浸透してき た。コロナ禍になり、「人と人 の接触による感染リスク」とい う事態が発生したことで、当初 は店舗休業を余儀なくされ、大 きなダメージを受けた。ニュー ノーマル対応の環境が整備され た現在は、各サロンで十全な感 染防止対策を講じて安全性を確 保して営業を継続している。オ ンラインによる事前カウンセリ ングやバーチャルメーク、ビデ オ会議ツールを用いたイベント や講習など、デジタル・リアル 双方のメリットを活用した施策 が登場し、従来とは異なるアプ ローチで新規顧客へ訴求するケ ースもみられる。行動規制が緩 和され、リアルでの接触も増え ていることから、サロンだけで なく、商業施設でのブース出展 や、異業種とのコラボレーショ ン施策など、対面型のサービス もコロナ禍前と同様に実施され るようになっており、より幅広 いニーズへ対応できる商品・サ ービスの開発が求められる。
 また、コロナ禍で非接触型の サービスへの需要が急増し、ダ イレクトセリング化粧品市場に おいても、ECチャネルに力を 入れる企業が増えた。前述した ように、新しい顧客層へのアプ ローチが可能になった半面、新 規顧客を如何にしてリピートユ ーザー、ロイヤルユーザーにな って もらうかがカギとなってい る。従来のサロンビジネスでは、 サロン等を拠点に対面でカウン セリングや施術などを行い、顧 客と触れ合うことで販売員との 信頼関係を育み、ブランドや商 品への愛着を抱いてもらう導線 が確保されていた。ダイレクト セリング化粧品企業が展開する オンライン施策においても、オ ンラインカウンセリングや各種 アプリを用いたサービス等を提 供することによって、販売員や ブランドとの接点を密にする取 組みが行われているが、顧客の 定着には未だ課題が多いよう だ。これには、販売チャネルや ツールの違いだけでなく、コロ ナ禍によって、消費者の価値観 が多様化・細分化したことも要 因として挙げられる。
 コロナ禍は未だ第7波の中に あり、ニューノーマルのライフ スタイルは当分続くとみられ る。その間にも、消費者のニー ズや価値観は変化を続け、コロ ナ禍前とは異なる様相を呈して いくとみられる。サロンビジネ スも、また新たなステップに入 っていると言えるだろう。