特商法の次期改正 警戒要する参入規制論

 18年改正の〝施行5年後見直 し〟規定や苦情件数の高止まり などを理由に、日本弁護士連合 会が7月、特定商取引法の規制 強化を求める意見書を消費者相 等へ提出した。業界にとって一 番の懸念材料になり得るのは、 いわゆる「訪問販売お断りステ ッカー」の有効性を条文上で明 記すべきとした提言だろう。一 方、意見書の“本丸”ではない ものの、検討テーマに浮上した 場合、業界に予期せぬ変動をも たらしかねない提言も。それが 参入規制論だ。
 周知の通り、「ステッカー」 に象徴される不招請勧誘規制論 と同様、参入規制論も過去の有 識者会議で幾度も検討されてき た経緯をもつ。ただ、消費者団 体等の推進派と事業者側の反対 派の間で激しい議論が戦わされ てきた不招請勧誘と異なり、会 議の事務局による提案といった 形でテーマの一つに盛り込まれ はするものの、実質的議論がな いまま時間切れ というパタ ーンが常だった。
 これに対して、日弁連の今回 の参入規制論は、早いタイミン グでの消費者保護を推進する現 場からの提言と言え、過去のパ ターンからすると異色。日弁連 が参入規制論を言い出すことも 初めてだ。
 日弁連の構想は訪問販売と電 話勧誘販売、連鎖販売取引の3 類型を念頭に置いており、訪販 と電話勧誘は「店舗販売に準ず る信頼確保」を理由に、国もし くは地方公共団体への登録を提 案。連鎖は「登録や事前確認制 度等が考えられる」とする。
 過去の議論で、参入規制に懐 疑的な意見の代表だった〝お墨 付き〟と〝行政コスト〟には、 注意喚起の徹底や登録を〝後援 ・推奨〟と誤認させる行為の禁 止、他の業法の類似制度の参照 や手続きの簡素化、被害減少に ともなう行政負担の軽減といっ た側面から反論。思い付きのレ ベルではなく、内部で練り上げ た上で意見書に盛り込んできた 形跡が窺える。消費者保護の立 場から過去の改正議論をリード してきた有力団体だけに、次期 改正の審議で参入規制論が取り 上げられた場合、従来とは異な る流れを辿る可能性も捨てきれ ない。
 取材や過去の本紙によるアン ケート調査を手掛かりにする と、業界の参入規制論に対する 反応は、反対一色というわけで はない。レピュテーションの改 善効果などを期待する意見が一 部にあることも事実だろう。が、 一口に参入規制と言っても、届 け出レベルから実質禁止に近い 許可制まで幅が広い。導入当初 はハードルが低くても徐々に上 がっていく可能性を内在する点 は、特商法の行為規制や罰則と 同じだ。次期改正で参入規制論 がテーマ化される可能性は現時 点で 未知数。ただ、仮に浮上し た場合、業界はそのリスキーさ を踏まえた上で慎重な意見の表 明が求められるのではないか。