細分化する需要への対応を

 1面で報じているように、目元に関するスキンケア・メークに関する化粧品は、コロナ禍の中で需要が増えている。従来は女性ニーズがほとんどだったが、 近年は男性の需要も増えつつある。目元用アイテムに限らず、価値観の多様化が急速に進んでいることを受け、ダイレクトセリング化粧品分野では、 性別や年齢にかかわらず使用できる製品の開発が進んでいる。

 ポーラのパーソナライズドブランド「アペックス」では、男性(自認含む)の肌分析体験人数が4月末時点で1万人を超えた。主に若年層の利用が多い、 が30代、40代、さらにはそれ以上の年代にも利用が広がっているという。背景には、コロナ禍によってマスク荒れなどの肌悩みが増えたことや、 オンライン会議の普及で自分の肌を見る機会が増えたことが挙げられる。「アペックス」の肌分析には、一度の体験でなく、季節毎の肌の違いや、 日々のスキンケアの効果を確かめることを目的にリピートで肌分析を受けるケースも増えている。シワ改善を訴求する「リンクルショット」シリーズも、 男性のニーズをキャッチするフックアイテムとしての役割を果たしている。

 「ジェンダーレス」で使用できる化粧品では、スキンケアなどのベースアイテムが多い。アイビー化粧品が6月1日に発売した薬用スカルプケア「ステムシグナル」は、 男女問わず使用できるヘアケアアイテムとして訴求している。「髪の悩み」という男女共通」の問題を、性別という枠組みではなく、生活環境やストレスの増加、 加齢等による髪へのダメージ、頭皮環境に着目している。「ジェンダーレス」をうたったアイテムは、ダイレクトセリング化粧品各社が発売しており、 今後も増加するとみられる。

 一方、ポーラ文化研究所がこのほどまとめた調査レポートでは、スキンケアやメークの考え方に男女で差があることが分かった。 同調査では、スキンケアについて、女性は「生活で欠かせないこと」と捉える傾向があるのに対し、男性は「対人関係に関わるもの」と捉える傾向が多い結果となった。 メークについては、女性は「コミュニケーションや社会との協調に関わること」と位置づける人が多く、男性は「特に考えはない」が大勢を占めた。 スキンケア化粧品は、近年は男性需要の増加が指摘されているが、使用する理由については、女性が「自分自身」のためであることが多いのに対し、 男性では「対人」のためが多いことが同調査によって示唆された。一方、メークについては、男性では利用習慣が定着していないことがうかがえる。
 価値観の多様化によって、「なぜ化粧するのか」という理由は、コロナ禍で細分化が進んでいる。細やかな分析に基づくものづくりが必要だ。