普遍的な価値の提供こそ

  2022年も3カ月を残すところとなったが、引き続きコロナ禍で始まり、コロナ禍で終わる年になりそう。 今夏、過去最大規模の感染となった第7波はピークを過ぎた。過去2年間、秋頃には感染拡大が小康状態となり、 観光振興を目的とした割引制度などによって、各地で客足が増えた。今年も旅行支援が行われるが、冬には第8波の到来が懸念される。 ワクチン接種が進んでいるものの、治療法が確立するまでは似たような状況が続きそうだ。
 ダイレクトセリング化粧品分野では、サロン展開が従来型訪販に代わる販売チャネルとして定着して久しい。コロナ禍によって、 「3密の回避」が求められたことで、サロンのメリットである「1カ所に集ってコミュニケーションを図る」ことへの懸念が広がった。 現在は、感染防止対策の徹底や、ITツールの活用によって、ニューノーマル時代に対応したビジネスモデルへのシフトが進み、 安定した事業展開が行われている。コロナ禍によって消費者の価値観は大きく変わり、“おうち美容”をはじめとする美容意識の高まりや、 昨今の世界情勢を受けて、メンズコスメのニーズ増、同時にジェンダーレス、ジェンダー平等をうたったアイテムの開発も進められている。 そもそも、価値観は時代とともに変化するものであり、コロナ禍という社会情勢の変容が、それを促進させたと言える。
 ダイレクトセリング業界は、戦後から高度経済成長時代、バブル時代とその崩壊、阪神淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災と、 幾度となく困難な時期を乗り越えてきた。大きな出来事とともにパラダイムシフトが起こってきたが、 いつの時代でも消費者ニーズに寄り添った商品やビジネスモデルを構築し、今に至っている。コロナ禍においても、対面販売のノウハウを活かしつつ、 デジタル技術を併用することで、新しい時代に適合したビジネスのあり方を確立している。
 コロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻など、世界的に不安定な状況が続いているが、どのような時代になっても、 このビジネスの特徴である「人と人のつながり」は、大きな強みだろう。コロナ禍の中でも、当初こそ不安が覆っていたが、 オンライン会議を積極的に活用することで、遠方や多忙なメンバーにも、時間や場所を選ばずにアプローチしやすくなったなど、 新しいビジネスの方向性も見えてきた。コロナ禍が収束した後も、この流れは変わらず、 リアルとオンラインのメリットを活用したスタイルが定着するとみられる。この2年半の間、 人と人が会うというごくアナログ的な行為の大切さを痛感した人は多い。このビジネスの付加価値が普遍的なものであることの証左と言えよう。