破産法申請、背景に「経営統合」の不首尾

 有力MLMのM&Aで業容を拡大してきた米ニューエイジと子会社3社が8月末、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法第章の適用を申請、 裁判所の承認を得て経営再建に乗り出した。MLM売上の4分の1を占めた日本市場も直接・間接の影響を免れず、アリックスジャパンが9月末で営業を終了。 アライヴンはグループを離脱していた旨を明らかにした。このような状況下、〝チャプター〟の申請に至った背景にも、改めて業界の注目が集まっている。
 申請に至る財務状況の悪化については、裁判所に提出された資料や当事者の宣誓書で、複数の理由が説明されてきた。
 6月にニューエイジのCRO(チーフ・リストラクチャリング・オフィサー)に就任し、 申請後は財務アドバイザーとして再建を指揮するローレンス・パーキンス氏は、世界的なコロナ禍にともなうMLMの苦戦、サプライチェーンの混乱、 ニューエイジ経営陣の相次ぐ交代、米アリックスに関連した米FCPA(連邦海外腐敗行為防止法)違反の可能性の調査費用などを列挙。例えばMLMは、 対面勧誘やイベントの開催が妨げられたことで「売上が大幅に減少した」と率直に述べている。世界売上の2割を占めた中国は、 当局の〝ゼロコロナ〟政策の下で特に厳しい影響を生じたという。積極的なM&Aの一方、過去3年でCFOは3度も交代。 M&Aを主導した前CEOが今年1月、唐突に辞任するといったマネジメント環境の不安定さも響いたとしている。
 また、見逃せないのは、傘下のMLMの「経営統合」計画も一因とされている点だろう。
 CROは、市場競争で優位に立つことを狙った2年前のアリックス買収が、そのための資金繰りと同時に、 複数のブランドをどのように統合するかという課題を生んだと説明。一足早く傘下入りしていたモリンダなどとアリックスの統合は、 一部の市場では進んだ模様だが、日本では〝チャプター〟申請のタイミングで〝白紙撤回〟となった。 撤回の直接的な理由はアリックスジャパンの営業終了とされているが、見方を変えれば、 統合が想定したようにはスムーズに進まなかったことが「キャッシュ・ポジションの低下」(CROの宣誓書より)を招く一因になったと言える。
 アリックスは過去、国内外で自社より小規模なMLMの買収を繰り返してきたため、M&Aの実績は豊富。が、 今回の統合相手のモリンダとはグローバルの事業規模が拮抗し、会社としての歴史には数倍の開きがあった。また、 統合後はアリックスのマーケティングプランが採用される予定だった。プランが切り換えられるモリンダ側のフィールドに対しては、 慎重な交渉で理解を得る必要があったとも推察される。