アムウェイ行政処分 会員逮捕、〝呼び水〟になったか

  消費者庁から「日本アムウェイ」(以下ア社)に対して、特定商取引法違反で6カ月の取引等停止命令を含む行政処分が下された (10月27日号4面既報)。 言わずと知れたMLM最大手であり、業界各社のコンプライアンス政策の模範たるべき存在でもあったはず。それだけに業界に与えた衝撃は大きく、 どのような経緯で今回の処分に至ったのか、その背景に注目が集まっている。
 処分で認定された違反は氏名等不明示、概要書面不交付、公衆の出入りする場所以外の場所での勧誘、迷惑勧誘の4つ。 氏名等の明示と書面交付の義務は連鎖販売企業にとって〝イロハのイ〟であり、最大手のフィールドで起きた違反としてお粗末としか言いようがない。
 他の2つは、一般の出入りがない会員らが利用する建物で連鎖販売契約をもちかけ、断られると「こんなに良い物勧めているのになんで分からんの」 などと告げていたというもの。勧誘の目的を明らかにしないアプローチの入口にマッチングアプリを利用していたことも含め、悪質の批判を免れないだろう。
 一方、これら違反行為と多くの類似点をもつ事案の摘発に昨年11月、京都府警が踏み切っていた。
 当該の事案は、昨年3月、男性会員がマッチングアプリで知り合った女性を京都市内で食事に誘い、 移動した建物で別の女性会員が女性にエステの体験を持ち掛け、翌日、エステのため建物を再訪した女性に化粧品の購入と連鎖販売の契約を勧誘したというもの。 この事案と、消費者庁が処分で公表した3事例のうち1事例の中身が似通っていることから、処分の記者説明会では同一案件かを問う質問が相次いだが、 同庁の取引対策課は明確な回答を避け、京都府警との連携の有無についても答えなかった。
 ただ、処分を伝えた大手日刊紙は、関係者の話として府警の摘発した事案が処分の「端緒になった」と報道。行政筋に近い業界関係者の一人は、 本紙の取材に「端緒になったことは間違いないと思う」と述べた。摘発で逮捕された会員2名のうち1名には昨年12月23日、罰金の略式命令が出され、 それから2カ月半後の今年3月8日、消費者庁による立入検査がア社に入っている。仮に、昨年の逮捕が〝呼び水〟 となり消費者庁に処分を判断させたのだとしたら、会員1名の刑事罰では事態が収まらなかったことになる。
 昨年の逮捕報道後、ア社は2名の会員資格停止と全ビジネス会員を対象としたミーティング、トレーニングを表明。しかし、消費者庁が公表した残り2事例は、 今年1~2月に行われた氏名等不明示などの違反を認定している。実効性をともなったコンプライアンスを徹底できていたのかも改めて問われている。