リアル・デジタルの両軸こそ

  2020年から始まったコロナ禍は、3年が経過しようとしている。この間、ダイレクトセリング業界でも、 デジタル・オンライン施策の導入が急速に進んだ。2022年はそれ以前に比べて社会経済活動が活発化したことで、リアル施策へ回帰する動きがみられるが、 コロナ禍が収束した後の「アフターコロナ」でも、コロナ禍前の社会へ完全には戻らないだろう。コロナ禍でビジネスのあり方は大きく変容したが、 時代の流れに対応しが商品・サービスを提供するのがこのビジネスの強みだ。
 ダイレクトセリング化粧品分野では、約年にわたって、サロン展開が従来型訪販に代わる販売チャネルとして浸透してきた。 コロナ禍で対面での活動が制限されたことで定石が崩れたが、感染防止対策を徹底した上でニューノーマル対応のサロンビジネスを構築した。同時に、 デジタル・オンライン施策を積極的に導入することで厳しい状況を乗り越え、新しいサロンの姿が見えてきた。人と人がつながる対面販売を主軸としながら、 公式アプリやSNSといったデジタルツールを活用することで、コミュニケーションを補完。 従来の対面方式ではアプローチができなかった潜在需要に対しても、デジタルツールであればアプローチしやすい利点もある。コロナ禍によって、 自宅でのケアを提案する〝おうち美容〟など、多様な施策も生まれたが、サロンを軸としたビジネスモデルでは、 アプリなどでアプローチした顧客を最終的にどのようにしてサロンへ誘うか、導線確保が課題となっており、 より魅力的な商品・サービスの提案が求められている。
 コロナ禍で消費者のライフスタイルや価値観は大きく変わったが、つながりを求める点はどのような時代になっても変わらない。 サロンにおけるオンラインカウンセリングや各種イベントは、諸事情で外出ができない人や、 遠方のため縁が途切れがちな人ともつながることができる点が大きなメリット。行動制限を強いられた不自由な時期を経験したからこそ、 これまで見逃していた点が改めて明らかになったという側面が多分にある。リアルの対面販売で培ってきたノウハウが、 デジタルツール上でも有効活用されていると言える。同時に、施術やより詳細なカウンセリングなどは、リアルでの対面の方が満足度が高く、 デジタル一辺倒ではなく、リアル・デジタルの併用がビジネスモデルとして定着するとみられる。リアル施策もここにきて再開の動きが強まっているが、 ここでもデジタルツールの活用が積極的に行われている。
 リアルにせよデジタルにせよ、接点のあり方が変わっただけであり、人とのコミュニケーション、対話が肝であること、 ダイレクトセリングの付加価値であることには変わりがない。