施策の多様化に期待

  本紙が実施した「第73回ダイレクトセリング(DS)実施企業売上高ランキング調査では、 調査企業125社の小売ベースの売上高総額は1兆3879億4700万円となった。前期との比較では0.2%減、2022年7月の前回調査時比で、 マイナス幅は0.5ポイント縮小した。2022年は、ワクチン接種の進展などを背景に、ニューノーマル対応の社会経済活動が活発化した。一方で、 ロシアによるウクライナ侵攻など、世界情勢の不安定化などによって社会のあらゆる分野でコストが増加し、企業活動、 消費生活ともに厳しさを増した年であった。
 ダイレクトセリング業界はバブル崩壊やリーマンショックなど社会情勢の変化や消費者の価値観の多様化の影響を受けてきたが、 近年は多くの企業において、業態改革の成果がみられるようになっていた。コロナ禍に伴う社会経済活動の停滞によって、2020年は大きな打撃を受けた。 2021年はニューノーマルに対応したさまざまな商品・サービスが開発され、2022年はその動きがさらに加速した。中でも、 リアル・デジタル双方のメリットを活用した施策が急速に拡大した。イベントやセミナーなど、これまで大規模会場を使って実施してきた施策についても、 オンラインのみの開催や、会場をオンラインで配信するハイブリッド型の開催も増加した。リアル開催は、対面でしか味わえない体験であり、 このビジネスの根幹と言える。また、オンライン施策は、遠隔地など、さまざまな事情でリアル会場には参加できない人でも手軽にアクセスできることから、 グループとのつながりを維持しやすく、モチベーション向上に寄与できる。コロナ禍において、 幅広い年代においてデジタルツールを活用する動きが広がったことも相まって、デジタル施策の活用が続くとみられる。
 同時に、サロンでの営業や異業種とのコラボ、商業施設での体験イベントなど、 リアルでの多様なアプローチによって新規顧客の獲得につなげてきた取組みについても、ニューノーマルの生活様式の浸透とともに、 その手法にも変化がみられる。サロンでは十全な感染防止対策を講じて営業活動を行い、個室の増設やオンラインカウンセリング、 ハンドエステに比べると接触が少ないメニューなどを導入して、ウィズコロナに適応したスタイルへのシフトを進める。 サロンと同等のサービスを提供する訪問エステや、巣ごもり需要を見据えたネット通販の強化といった動きもみられ、 これまで培ってきたノウハウを組み合わせて対応している。オンラインセミナーや動画配信によるフォローも活発だ。
 リアルイベント再開の動きも強まっており、2023年はさらなる施策の多様化が期待できそうだ。