〝アフターコロナ〟見据えた1年に

  ダイレクトセリング業界の化粧品分野では、コロナ禍におけるニューノーマルに対応したビジネスモデルとして、 ECなど新規顧客にアプローチしやすいチャネルとの融合が進み、リアル・デジタル双方のメリットを活かした施策が加浸透した。主力のサロンビジネスでは、 安心して来店できる環境の整備や新メニュー、オンラインカウンセリングを導入するとともに、自宅でエステを提供するなど、 顧客のニーズに柔軟に対応できる体制へシフトを進めてきた。今春には、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが2類から5類に移行する見通しとなっており、 これによって消費者の消費行動がどのように変化するか注目されるところだ。
 本紙が2022年12月に実施した「第73回ダイレクトセリング実施企業売上高ランキング調査」の中で、 化粧品を主力商品とするダイレクトセリング企業42社のうち、エステサロンや地域密着型店舗を展開しているのは19社で、 半数近い企業がサロンビジネスを導入している。サロン展開そのものは1980年代頃からワミレスコスメティックスやシーボンといった企業が導入していたが、 2000年代に入り、ポーラをはじめ、ナリス化粧品など、各社が独自のスタイルでビジネスの「見える化」を進め、透明性を確保してきた。
 サロンビジネスは、従来型訪販に代わるビジネスモデルとして定着してきたが、コロナ禍でリアルでの対応が難しい状況になった結果、 オンラインカウンセリングをはじめとするデジタルツールを活用した新たな施策が生まれた。無論、リアルでの対応や施術はこのビジネスの根幹を成すものだが、 デジタルツールを積極的に活用することで、これまで取りこぼしてきた潜在ニーズや、諸事情で来店できない人へフォローしやすい環境が整った。 コロナ禍で見えてきたのは、感染リスクを考えて来店を控える利用者だけでなく、仕事や育児・家事、介護など、 さまざまな事情でサロンを利用したくても出来ない需要があることだ。
 世界的に社会経済活動の活性化に向けた動きが強まっており、日本国内でもその流れが加速している。この1年は、感染状況の推移を見守りつつ、 〝脱コロナ〟あるいは〝アフターコロナ〟への道筋をつけることになるが、リアル・デジタル双方を活用した取組みが引続きカギとなりそうだ。一方で、 間もなく1年を迎えるロシアによるウクライナ侵攻は依然として終息に向けた見通しがつかず、情勢不安等を背景に、あらゆる分野でコスト増が圧迫しており、 予断を許さない状況にある。ダイレクトセリング化粧品分野全体では、見通しがきかない環境が続くが、ニーズを着実に読み取って乗り切っていきたいところだ。