遅れた給付、「救済基金」の見直し急務

    「ジャパンライフ」事件の被害者から、「訪問販売消費者救済基金」の利用申請を受けていた日本訪問販売協会が2月2日、 21件の給付を行ったと明らかにした(2月9日号1面既報)。ジャ社は17年末に破たん。利用申請は翌18年の初頭から寄せられはじめたため、 給付まで実に5年を要したことになる。一刻も早い救済が求められる中で、なぜ長期化したのか。要因の分析と「救済基金」制度の見直しが急務となっている。
 給付が遅れた理由の一つには、ジャ社の問題が事件化するまで「救済基金」が利用されず、休眠状態にあったことを指摘できる。 制度は改正特商法に基づき09年末にスタート。が、そこから約8年間、一度も日の目を見ることなく、運用実績を積む機会が訪れなかった。
 もっとも、ジャ社の件は16年~17年にかけて国会、メディアで大きく取り上げられ社会問題化していた。この間に、 「救済基金」の申請が寄せられる可能性も想定した体制作りをできた余地は指摘される。
 最終的に寄せられた申請件数は推定で数千件(契約件数ベース)。契約内容の複雑さに加え、審査に必要な資料の添付が不十分な申請も珍しくなかった模様で、 仕分けにかかる労力が事務局のキャパシティを大きく上回った事情を窺える。コロナ禍にともなう作業の遅延も、やむを得ない要因とは言える。
 一方で、処理スピードを速めるための事務体制の補強などは見送られてきた。18年の段階で被害者の申請を代行していた大阪の被害対策弁護団は、 「会員会社に応援を求める方法はなかったのか」「アルバイトを雇って手伝ってもらうこともできたのでは」と苦言を呈する。
 また、事務局は当初、ジャ社の破産手続きが完了し、配当の有無等が確定した後でなければ給付を行わない方針を示してきた。 結果的に破産が完了する前に給付は行われたが、「救済基金」の「業務実施方法書」に明文化されていない〝特例ルール〟を持ち出すような消極的姿勢も、 5年と長期化した理由の一つに数えられる。
 今後は、再び利用申請が寄せられた場合に備えた、制度の見直しが必至。事務局もその必要性を認識しており、 「救済基金」が利用申請の対象となった会員会社の破たんを想定していない点の解消などを検討していく旨を説明する。
 しかし、そのためには、ジャ社被害者への給付が遅れた要因をデータとともに洗い出す必要がある。今回、21件の給付実施が公表されたが、 寄せられた申請の総件数や事務局で受理した件数、そこから第三者機関に審査を付託した件数、給付を妥当と答申された件数などは、公表されていない。 給付対象となった契約の未返金額や給付額も同様。まずは情報開示が先決だ。