双方向性の施策こそ

    ダイレクトセリング化粧品市場では、リアル・デジタルの融合が活発だ。コロナ禍の厳しい時期を乗り越え、ニューノーマルに対応した環境を整え、 ECなど非接触型の販売チャネルが消費者のニーズを掴んだ。現在、各社が〝アフターコロナ〟を見据え、多様化・細分化した需要の掘り起こしを強めている。
 ダイレクトセリング化粧品最大手のポーラは、主力の痛く販売チャネルの苦戦が続いている、が、その要因は、 これまで顧客接点として役割を果たしてきたショップ数の減少が大きい。2022年12月期末時点で、ショップ数は2946店舗で前期比281店舗減。 ポーラ・ザ・ビューティー店舗数が537店舗で同51店舗減となった。委託販売チャネルにおける購入単価は回復したが、顧客数は2ケタ減となっている。 顧客獲得でポーラが力を入れているのは、リアル・オンライン施策の接続で、オンライン経由の新規顧客獲得数は前年度比2ケタ増と、 コロナ禍における消費者の購買行動の変化を示唆している。同社は現在、店舗でSNSによる情報発信を行っており、フォロワー数を伸ばしている。 オンラインで直接つながる顧客リストを拡充し、新規獲得を図っている。
 今期は、不安定な世界情勢を背景とした物価高という大きな課題があるものの、消費行動の活発化も期待される。ポーラは、 前出のリアル・オンライン施策の接続を強化し、国内では顧客情報の統合を行い、 各チャネルをシームレスにつなぐ新しいビジネスモデルの構築を進めるとしている。国内共通の顧客基盤を構築することで、 チャネルの特性や強みを生かした施策を展開し、フォローの即時性向上、パーソナライズによる顧客体験価値の向上を図る。
 シーボンは、若年層をメーンターゲットとした新ブランド「シーボンパル」を昨年7月に立ち上げた。クレンジング、洗顔、 化粧水といったシンプルなラインナップと手頃な価格によって、中高年層に比べ購買力が弱い若年層でもシーボンブランドに触れられるようハードルを下げた。 12月には、東京・新宿で世界観を体感できるショップを出展、限定イベントを開催したほか、集英社の美容雑誌「MAQUIA」の公式ウェブサイト 「MAQUIA ONLINE」において、MAQUIAインフルエンサーたちが商品の満足度を評価する「イチオシ認定」のクレンジング部門を獲得するなど、 リアル・オンラインの双方向で若年層へのアプローチを強めている。これらの施策が奏功した結果、20~30代の顧客が増加したが、一方で顧客単価が低下。 さらなる顧客獲得による売上基盤の強化が課題となっている。〝アフターコロナ〟へ機運が高まる中、新たな戦略構築が必要な時期に来ているようだ。