じわり「再値上げ」、各社が転嫁に苦慮

     昨年の今頃より、ダイレクトセリング業界でも目につき始めた「値上げ」。原料費等の高騰を内部で吸収してきた会社も、 今年に入って価格の改定に乗り出している。さらに、コストの上昇に歯止めがかからない状況から「再値上げ」に踏み切るケースも。 消費者に配慮して高騰分を十分に転嫁できれなければ、収益への影響が避けられない。
 今年1~2月に価格を改定したDS企業は、フォーライフリサーチ(インヴァーニ)、ダイアナ、シナジーワールドワイド、イオスコーポレーションなど。 3月以降は日本トリムやシャルレなどが実施・予定する。いずれも昨年の値上げは見送ってきたが、円安やロシアのウクライナ侵攻も背景にコスト上昇が続く中、 自助努力だけでは吸収が難しいと判断。苦渋の選択を迫られた形だ。大手を含む多数のDS企業は昨年春~秋、すでに値上げ済みであることを踏まえると、 価格を改定していないケースのほうが少数派という状況を生じている。
 このような中で2度目の値上げに踏み切るケースも出てきている。その一社であるニュースキンは、現行価格に対して一律5%の引き上げを4月に行うと告知。 同社は昨年9月にも一律約3%の引き上げを行っており、2度の改定を合わせると約半年前の価格に対して8%強の値上げとなる。
 昨年5~月に9割の商品を値上げしたタッパーウェアも、金属原料の高騰を背景に鍋等の耐久財で再値上げを視野に入れる。やはり再値上げが避けられないとみている別の外資系DS は、日本以上のインフレにさられている本国の圧力を指摘。「もうすぐ本社から新しい価格の一覧が届くはず。それを見て検討することになるが、 もう一度値上げせざるを得ない可能性が高い」「他社が再値上げしても驚きはない」とつぶやく。
 本紙が昨年夏に実施した業界アンケートでは、価格改定を実施・予定していた企業の半数が「ほとんど影響はなかった/ないと見込んでいる」と回答。 その後の取材における各社の動向を見ても、これまでの値上げについては何とか乗り切ったというケースのほうが多いように見受けられる。
 ただ、期間を置かずに再値上げとなれば、ユーザーサイドの反応も変わってくる可能性が考えられる。 購買意欲に大きな影響を生じるリスクが想定されるようなら、高騰分の十分な転嫁は躊躇せざるを得ず、会社の収益の圧迫につながってくる。 MLMの場合は、過去の値上げで通例だった報酬計算用のポイントの引き上げが行われず、 据え置かれることでディストリビューターの活動意欲を削ぐことも考えられる。高騰問題はすでに民間で対処可能な域を超えている。 政府の抜本的対策が早急に求められている。