「次の一手」はDX推進ありき

     ダイレクトセリング業界では、コロナ禍の3年間で、ニューノーマルに対応したさまざまな商品・サービスが登場した。 消費者の購買行動や価値観の多様化に伴い、ECやオンラインカウンセリングといったデジタル施策が増えたが、同時に、サロンビジネスやイベントなど、 リアル施策の復調・強化もみられるようになってきた。コロナ禍で社会のあり方が大きく変わったが、アフターコロナに向けた動きが活発化しており、 コロナ収束後の「次の一手」を見据えて戦略が不可欠だ。
 ダイレクトセリング企業のシステム支援を手掛ける日本ネットワークシステムズ(JNS)は、アフターコロナの社会においても、 絶えず変化し続ける社会情勢に対応できるビジネス環境が求められるとして、社員がテレワーク可能な環境の構築や、イベントのWeb開催など、 リモート化して会員の活動を支援することが重要と指摘している。同時に、近年、大規模な自然災害が多発しており、 首都直下型地震や南海トラフ巨大地震といった巨大地震への備えとしてBCP(事業継続計画)が不可欠であり、その観点からも、 デジタル施策を強化することの重要性を強調する。さらに同社は、コロナ禍によって、BCPのあり方も変化したと指摘する。従来のBCPは、 前出のようなリスクを想定したものだったが、コロナ禍にみられるように、影響が広範囲で、全地域で同時期に発生するリスクがあることも示された。 そのようなリスクの場合、他地域からの支援は限定的となってしまうため、〝復旧〟ではなく、損失を抑えてビジネスを継続することを想定した計画の策定が、 より重要性を増しているとしている。
 コロナ禍で新たなビジネスモデルとして浸透・定着した、リアル・デジタル両軸の施策は、事業の継続性という視点からも有用であろう。例えば、 サロンでのオンラインカウンセリングやオンラインセミナーの開催は、感染防止目的に始まったものだが、家事や育児をはじめ、 さまざまな事情で外出が難しい人々も手軽にアクセスできる手段として認知され、活用が進んでいる。従来型訪販では、 販売員と顧客の関係性が何らかの理由で途切れてしまった場合、顧客からのリピート購入も途絶し、顧客を取りこぼしてしまいがちであった。 オンラインによるイベントやフォローといったテコ入れが行われることで、顧客掘り起こしにも繋がるケースがある。 ダイレクトセリング化粧品最大手のポーラでは、販売チャネルを横断した顧客IDの統一化を図るとしているが、 この取り組みも事業の継続性を視野に入れたものだろう。
 いずれにせよ、「次の一手」には、デジタル技術の活用が必須と言える。DX推進は待ったなしの状況にある。