くすぶり続ける「5年後見直し」の火種

    前号1面で伝えた通り、2016年改正の〝施行5年後見直し〟附則などを理由に、特定商取引法の大型改正を求める消費者関連団体の動きが活発となっている。 消費者庁は、過去の改正で通例だった有識者会議の立ち上げやトラブル実態の調査を予定していないものの、 今後の展開によっては状況に変化を生じる可能性もある。
 17年12月に施行された改正法は附則で、施行から5年を経過した時点で施行状況を検討し、必要がある場合、措置を講ずると規定。 昨年12月に5年が到来し、約60の消費者団体で組織する「全国連絡会」や弁護士会などが多方面で活動している。
 一方、消費者庁は現時点で改正は必要ないというスタンス。理由の一つが、定期購入商法の規制強化などを行った21年改正。 この改正のあり方を議論した20年の「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」で、16年改正時の論点も含めて検討し 「必要があることは令和3年(=21年)改正で改正した」として、附則の要求には〝対応済み〟とする。
 ただ、「―検討委員会」の名称に「預託法」が入っていることから分かるように、当時の最大のテーマは「ジャパンライフ」 事件で知れ渡った販売預託商法の対策だった。議論の多くは同商法に割かれ、 対策が急務とされた経緯やコロナ禍1年目の不慣れなオンライン会議という事情もあって、特商法上の課題の多くは十分に議論されることなく〝時間切れ〟 に終わった感が否めない。21年改正では法定書面とクーリング・オフの電子化も決まったが、導入は政府主導で、「―検討委員会」では電子化の議論自体がなかった。
 また、21年改正で規制が強化された定期購入商法は、22年6月に改正法が施行された後、逆に相談件数を増やしている。 国民生活センターが3月15日に報告したデータによれば、月次の関連相談件数は昨年7月の約5200件を底に増え続け、1月は1万件を突破。 改正法が効果をあげていないとすれば、さらなる規制が必要という声を後押ししかねない。通販規制を再び見直すことになれば、 訪問販売や連鎖販売でも議論をという流れが想定される。
 消費者庁は3月9日、今後5年の消費者行政のロードマップをまとめた「消費者基本計画」の改定案を公表。重点項目の一つに盛り込まれた 「特定商取引法等の執行強化等」は、23~25年度の取り組み予定事項で法改正に触れていない。ただ、同庁によれば、この「―計画」は執行面に特化しており、 過去の改正のフォローアップや今後の改正の有無はそもそも対象外という。過去の改定時のパブリックコメントでは、 改正を行う旨の記載を求める意見も寄せられている。火種はくすぶり続けていると考えるべきだろう。