当面は見送りか、特商法改正

     16年改正の〝施行5年後見直し〟附則などを理由に、特定商取引法の大型改正を求める動きが活発となる中、 改正の必要性を問われた河野太郎消費者担当大臣は、過去の改正の検証や被害状況を注視していく方針を述べた(5月4日号4面詳報)。 法改正に消極的姿勢を示した形で、消費者関連団体が提唱する規制アイデアにも疑問符をつけた。このため、当面の抜本的な見直しは考えにくそうだ。
 大臣の答弁は3月30日と4月4日の衆院、4月14日の参院の各特別委員会で行われた。30日の衆院では、〝マルチ〟規制の強化を求める野党議員から、 連鎖販売取引に登録制を設けるアイデアを問われ、「審査しなければならないので、かなりの行政コストがかかる」 「行政コストとその効果が見合うのかどうかというところは若干疑問」と答弁。登録制は「特定の連鎖販売業者に事実上のお墨付きを与える」とも述べ、 「あまり良い案ではないのではないか」と応じた。
 連鎖の登録制は、昨年10月に発足した「特商法の抜本的改正を求める全国連絡会」や日本弁護士連合会などが意見書で提唱。 大型改正案の目玉の一つに位置付けるが、答弁で受け流される形となった。
 法改正を議論するため、過去の有識者会議に相当する検討会を開く可能性についても、詐欺的な定期購入商法の規制強化などを行った21年改正をあげて、 「これまでに改正された部分をしっかり、その効果を見なければいけない」とした。
 4日の衆院では、SNSのチャット機能によるやり取りでトラブルに巻き込まれるケースの増加を指摘し、電話勧誘販売の規制強化を求める意見に、 やはり21年改正の施行状況を注視していく考えを答弁。14日の参院では、「DoNotCall」制度の導入に費用対効果の観点から消極的見解を述べた。
 一方、大型改正を求める動き自体が下火になることは考えにくそう。「全国連絡会」による取り組みをはじめ、 国会・地方議員への陳情や地方議会における改正要請意見書の提出などが活発に続いている。
 また、大臣が見解の理由に述べた行政コストやお墨付きの論点は、改正派によって先回りされている。昨年7月の日弁連の意見書は、 参入規制の仕組みをもつ特商法以外の業法を参考とすることや登録事項の簡素化、規制による被害の減少で行政負担が軽減する余地を指摘。お墨付きリスクは、 注意喚起の徹底や登録を〝後援・推奨〟と誤認させる行為を禁止することで対応可能と反論する。
 6月に施行される改正政省令で通信販売のクロスセルが実質排除されるように、法律の本則に手を付けない規制も可能であることを踏まえると、 業界は気を抜くべきでないだろう。