電気・ガス訪販の処分 マーケット荒らす大手、猛省を

     特定商取引法による電気・ガス小売り訪問販売の処分が相次ぐ。しかも対象は大手の系列。模範たるべき会社による市場を荒らす行為は、 ダイレクトセリング業界にとっても迷惑な話。本来、率先して取り締まるべき電力・ガス取引監視等委員会の怠慢も指摘される。
 消費者庁は5月11日、「CDエナジーダイレクト」と営業委託先の2社に、訪販事業の6カ月の停止を命令。委託先による認知症の高齢者への勧誘等があった。 CD社は中部電力ミライズと大阪ガスの合弁会社で、どちらも大手と言える存在だ。
 5月25日には、委託先によるガス契約の勧誘で、料金が「安くなる」との虚偽説明があったなどとして、「日本ガス(日本瓦斯)」に3カ月の停止を命令。 同社も連結ベースで年2000億円以上を売り上げ、ガス市場で大手の一角を占める。
 小売り自由化を契機に聞くようになった電気・ガス系の特商法処分は、従来は小規模事業者が中心。警察による特商法容疑の検挙も、そちらが主だった。
 しかし、2年前、東京電力子会社の「東京電力エナジーパートナー」の電話勧誘販売事業に6カ月の停止命令を消費者庁が出し、風向きが変わる。 5月に相次いで処分されたCD社と日本ガスは、22年6月に同庁の立入検査を受けていた。具体的な背景は不明だが、同庁の姿勢に転換が生じたとみられる。
 昨年の立入検査後、CD社や日本ガスは訪販事業を自主的停止したり、改善策に乗り出していたことを説明。国民生活センターの「消費生活相談データベース(PIO―NET)」 を調べると、訪問販売に関わる「電気」の苦情相談は21年度の6769件に対して、22年度は3852件と4割以上減少している(6月13日時点)。 訪販の「ガス(都市・プロパン)」の相談も、21年度の839件が22年度は684件に減少。処分に至るプロセスで、トラブルの減少を生じた可能性もありえる。  〝委託先のやったこと〟などという言い訳が通じない以上、ずさんだった管理体制の再構築が急務なことは言うまでもない。そして、処分で認定された違反は、 電気・ガス事業法でも同様に問題となり得る行為だったからには、電力・ガス取引監視等委員会こそが先に処分、指導すべき件だったと言える。消費者庁は同委員会に、 特商法遵守徹底の注意喚起を行うよう“依頼”もしたという。
 一例だが、国土交通省が所管する建設業法は監督処分基準で、特商法で処分された事業者に営業停止処分を下すルールを定めており、「メノガイア」処分等で適用例がある。しかし、 同委員会によれば電気・ガス事業法にそのような規定はないとのこと。重い腰を上げられないというなら、同様の連動ルールを設けたらどうか。